101.荒びた古刹十二
そこに残っていたのは二人の男でった。一人は
しかし、とふと
目の前に居るのは二人の男だったが、これでは数が合わぬ。戦った数と殺した数と残っている数とを勘案して数が足りぬ。
「はて……あと一人居たような。」
そう、たしか小刀を投げ差して、太ももと眼球に突き立てた男が居たはずであり、その倒れていたはずの場所へと目を向けてみると、いつの間にかその男がいなくなっていることに気が付いた。
視線を巡らせてれば、今、
太ももに小刀が刺さっているがために、よろよろと無様に足を引き、痛みで真っ直ぐにもできない腕を何とか振って、ひいひいと情けの無い声を上げながらも、必死の形相で逃げ切らんとただただ
一瞬、追いかけるかという考えが
残るは二人。
僅か二人であった。
無論、ここに姿の見えない
どこか
刀を右手一本で携えて
「うぅ……。」
小さく男達が唸った。そうして一瞬、僅かばかりに後ずさりをしながら、それでも男達は覚悟を決めたのか、身を前傾に屈ませて刀を構え直していく。そうしてくれるのは、
ゆるりと表情を緩めながら、
刀を下ろしたままに、じいっと彼女は男の顔を見つめていく。それは相手の意思が整うまで待っているかのようで、男を見る
男が何度か浅く呼吸を繰り返し、最後に僅かにこくりと喉をならして、そうして目筋を細くさせながらも強く刀を握り直したことに、
その瞬間、やにわに男が足を踏み込ませるや、空を裂く勢いで鋭く
それを咄嗟に
「へぶっ!?」
丁度、右の頬へと拳がぶつかって、男の口から前歯が何本か飛び出していた。唇は歯へとぶつかった勢いで四方に小さく裂けて、細かな血が噴き出すと、零れ落ちた前歯も僅かに血を滴らせて、地面に転がっていく。そのまま
無理やりに屈みこませた頭へと向かって
「がふっ…………。」
男の鼻はへしゃげ、ぬちょりと血の混じった体液を
薄皮一枚を残して切り取られた男の頭は背中へと向かって零れていき、僅かに残った皮へと引っ張られて一瞬だけ宙で上下したが、それもすぐにぷつり裂けてしまい地面の上へと転がり落ちていった。
「十五。」
切り取られた男の首の動脈から、心臓の圧力を受けて吹き出した血が、
そうして残った一人へと顔を差し向ける。
最後となったその男はわなわなと震えながらも、気丈にも刀を八相へと構えて、じりっと地面を鳴らし一歩ばかり
それを見て取って、にまりと
すうっと体を潜りこませるようにして、男の手の届く範囲へと入りこむと、
「!?」
その瞬間、男は咄嗟に握っていた刀を頭に撃ち込ませようと手首を返した。刀の切っ先が消え去り、風を斬るよりも早く刀身が振られようとしたその刹那、男の腕ががしりと
「くそっ……てめえ……。」
無理やりに腕を振り抜こうと男が力を籠めようとした途端、掌との重なった部分にみしりと筋肉の
「おうっ!?」
気が付いた時には男の視界の中では天地が逆転し、足元に薄暗い雲を満たした曇天が、そうして視界の上は荒れくった色素の薄い大地に覆い尽くされていた。
男の体を、
自らの体を捩じるようにして相手を引っ張り込むと、そのまま
四肢が落ちる体の勢いについていけず、宙へと投げ出された次の瞬間には、低く重い音を響かせて、乾いて荒れ食った地面の上へと男の背中が叩きつけられた。
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