99.荒びた古刹十
徐々に徐々にと首筋へと近づいてくるのを感じて男は一層に表情を歪めた。
しかし、その鍔迫り合いとなったことが僅かに二人の動きが止まり、その瞬間を、機と取ったか隙と取ったか、取り囲んでいた男達が無遠慮に足を近づけていく。
彼らの足先がじりっと地面の砂が擦れる音で
「っ……。」
僅かに
このまま押し込めれば眼前の男の首筋は掻っ切れるだろうが、そのうちに後ろから斬りこまれる方が速いだろう。咄嗟に、
「あっ!」
男が声を上げた時には、もはや二人の体は平衡を失い、互いに絡み合うようにして倒れ込んでいた。
土埃を舞わせて地面の上を転がりながらも、
それで間合いを外したつもりではあったが、体を起こした
咄嗟に
「そんなものでっ!」
男は
服の裾を重ねただけ、当然、それだけで刀を防ぐことなど本来はできない。そのまま布ごとに腕を斬られるのが本来の結末という所だろう。ただ、
低く鈍い音がしたかと思うと、刀身が
「ば、
腕に
「
「似たようなものです。」
男の問いへと言葉を返すや、
もはや夕暮れとは言え、未だに
「十と一……。」
刀を振るい、切っ先に滴り始めていた血反吐を払うと、
最初は十を越えた人だかりとなって、まるで一つの壁のようにすら見えた男達の群れも、今となっては残りも片手で数えられそうな人数となっていた。こと、ここに至って男達も流石に自分達の身が危ういと感じ始めたのか、刀を構えながらも、顔中に冷や汗を掻いて
周囲には木々の無い荒れ地のはずにも拘らず、随分と近くから
そうこうしている間も、残った男達は
多対一であり、
自分から攻めていくのは、ある種の危険性を孕んでいたが、それでも
正面へと向かい刀を握り絞め背筋を伸ばして
誰でも良かったが、まず初めに片をつけてしまうなら、厄介そうに見える相手からだ。
微かに息を吸い込むと、
「うおうっ!?」
「なっ!?」
男が反応した刹那、その時には既に
振り抜かれた刀が弧を描き、地面に
目の前で、男の上半身だけがずるりとずれたかと思うと、下半身の上からずり落ちて、その肉塊が半回転しかけた所で頭から地面にぶつかっていた。
「これで十と二。」
切り落とされんとする切っ先を、
ひゅっと剣先が男の首筋を通る。
一呼吸おいて、男の首がずるりと滑ると、その頭がころりと姿勢を失ったように落ちて、足元の地面へと転がっていった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます