81.結城と石動十五
「ご老人の真似、何ともお見事ですね。随分と似ておりましたよ。」
話の内容には全く言及せずに物まねだけを褒めた
「そうでした?似てましたか?」
「ええ、とても似ておりますよ。」
褒められたことを単純に
存外とそれが嬉しかったのか、
ただ、途端に
長椅子の端に座っていた
「局長に汚らわしい手で触れるな。」
やにわに、
その表情が意外であったのか、
「ふふふ、
「あぁ?何を言ってる?」
途端、
腕を掴んでいた
僅かに尖った爪先が、
「いえ、なにね……。貴女様のような綺麗な方に
言いながら
あまりに突然の行動に虚を突かれていた
「何だ貴様は……。気色の悪い。」
体を引かれて、虚空に漂うことになった自らの掌を僅かに握らせて、
「おや、駄目ですか。残念。」
そう
「えっと、
そのどこか虫の居所の悪そうな彼女の顔に多少気まずさを感じながら、尋ねてみると、
「いえ、別に……
どこか棘のある
「
「……じゃあ、一体どういうものだっていうんですか?こんな風に誰でも彼にでも、手を出すのならば、私なんかと旅を共にする必要なんてないんじゃないですか。」
あんまりにも拗ねた様子で言う
慌てて
「そう言わないでくださいな。
「……なんですか?」
「こうやって私が誘うのを止めるということは、今後は
多少、やりこめるつもりで口にしてみると、
「あの……相手って……。」
「剣の相手や、あとは、
どこかしれりとした口調で
「それはっ……。」
微かに喉から声を出すや、
「いえ、その……私にそう言うことが出来るわけではありませんが……。その……。」
わたわたと掌を左右に振ってばたつかせると、緊張したように太ももの間に手を挟み込ませて、真っ赤にした顔を俯かせて
結局のところは相手をしてもらえないと言う答えだったことは、それはそれで悲しくはあったが、
「えっと……皆さんは何のお話をされているんですか?」
何とも
素直に言うても良かった。こう言う全くの物知らずな無垢な少女が顔を赤らめるのも、それはそれで楽しかろうが、ただ、言うたとしてもどうせすぐに理解はできないであろうし、それで説明を求められて教える手間も今は面倒であって、それが故に
「いえ、なに、
「はあ?」
適当な戯言のつもりで
釣り上がって見える程に目筋は細く、厳格な顔をしているのに、先ほどから、なんともまあ愉快に表情の変わる御仁だと思えてしまう。
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