80.結城と石動十四
「私は
それで言葉を促したつもりだったのだろうが、
「
「
せがまれて
「既に局長が私の名を呼んでいるのですから、それでもう良いじゃないですか。」
「挨拶とか名乗りって、そう言うものじゃないでしょう?礼儀ですよ。」
「
短くそれだけを言った。余りにも端的で感情の無い言葉に、傍らで聞いていた
ただそれよりも一層に
家老の屋敷で聞いたことが事実であるなら、江戸の傍流だという
そこら辺の
「お待たせいたしました。」
昨日入った蕎麦屋とは全く違う
一瞬だけ、話の流れに乗って何か話すべきだろうかと、全員が感じながらも、差しあたっても、この並べられた甘味を手に取るかと言う雰囲気になって、とりあえずというように
それで、他の面々もまあ良いやと言う雰囲気になって、甘味へと手を伸ばしていった。
「それで……
更に一際大きく口を開け大福へと齧りつこうとしていた
「さん、ではない。様をつけろ。
それは至極真面目な口調で、きっぱりと断言する口ぶりであった。
余りにも平然と、きっぱりと、そのような傲慢な物言いをしてみせる
「
「当たり前だ。本来、こちらのお方は貴様らのような
「そうですかえ。」
半ば呆れかえった口調で返事をしながら、
そんな多少に
そう言う筋合いで言えば、確かに姓もないような、そこいらの一般人が軽々しく口を利ける存在でないだろう。
無論のことながらに、
「それで
そう言って
「
尋ねてみると、
「はい、そうですけれど?それがどうかしましたか。」
「いえね。ちょいと気になりまして。貴女様のような方が、どういった経緯で、尾張の、しかも名古屋なんてところで街の
それはちょっとした好奇心であった。
江戸の
そんなことを尋ねられて、
「ええっとぉ……。」
言葉を悩ませて考え込んだ
「えっと……実は、私の
「ほう、そうなのですか。」
相槌を打ちながら、
簡単に目の前の少女は「偉い人」などと言ったが、成瀬の所で聞いた話が本当ならば、間違いなくそれは今の日の下で一番に偉い人間であるはずで、聴いている側からすれば、その言葉には僅かばかりに滑稽味さえ覚えてしまう。
「それで、その、
喋っていた
「
そこまで言い切ったところで、
「とか言い出して、すぐにこの
よよよっと目から涙を流しているかのように、
それに向かって、
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