78.結城と石動十二
「貴女様は、何なのです?」
刀へと手を掛けながら、
代わりにと言うように、
「い、
ぴょんぴょんと飛び跳ねて、視界を塞ぐ袖の向こうから声を掛けようとしている少女を、
少女の言葉に、ほうっとどこか値踏みした調子で
「護衛ですか。何ですかね。護衛と言うよりは、喧嘩を売ってきているように見えますがねえ。」
「黙れ
「おや、怖い怖い。護衛などと言われましたが、
言いながら
それは傍らで眺めていた
途端、ぴくっと
ただ、その表情は余りにも雄弁で、一切の言葉を発せずとも、周囲の人間には、彼女が何を考えているのかが直ぐに理解できてしまった。
遠巻きに眺めながら道行を歩いていた人々も、一層に足を向ける先を遠ざけて、うへえっと声を上げながら足早に立ち去っていくのが見える。
カチャッと
応じて
「一つ聞いても?」
乾いた空気の中に舞い立った塵すらも、その場で弾けてしまいそうなほどに、ぴりぴりとした空気の中で、さらりとした態度のままに
何も
それを感じて
「どうして、そんな
「何故も何も危険だからだ。一目にも腕が立ち……そして貴様は恐らくは
短く言って
「不埒などど……否定はいたしませんがね。」
にまりと口角を持ち上げて、
「……そこで足を引くなら、こちらも相手はせぬ。」
はつと、その言葉に傍らで様子を窺っていた
そんなことを言えば
ざりっと音がして、
当然であった。
ただ如何せん。
一瞬、空気の消え果てたように、周囲には音がなくなっていた。
と言うべきか、
気が付けば、
したりとでも言うべきか、
もうすでに、二人の間には、斬り合うと言う意思が満ちているかのように見えた。
ただ、その空気を全く気にも留めない勢いで、やにわに、
「もう、
何とも緊迫した空気に全く馴染まない幼けのない声を上げて、少女はぶんぶんと思い切りに
その余りにも幼げな行為に、緊迫していた面持をはたと崩してしまい
「局長。危ないですから。」
思わずも振り返って
「危ないのならやめてください!」
と、まるでぎーっとでも声を上げそうなぐらいに、歯を噛みしめて少女は袖を力一杯に握りしめる。
刀を抜くような空気から、途端と間を挫かれて、きょとんとなってしまった、
「
困ったように眉尻を下げて
「私は良いですけれど。あちら様が収まってくださいますかねえ。」
その言葉は、どちらかと言えば収まらなければ良いとでも思っているような響きがあった。
言いながら
「本当に駄目ですからね。
「ですが局長、この女は不審です。」
「不審ってだけで刀を抜かないでください。私の……えっと、局長の命令です!」
手に掴んだ袖を振り上げながら少女がそう言うと、僅かに
「む……ぅ……局長がそう言うのなら……。」
悩みに悩んだ末と言った口調でつぶやくと、
抜きかけられた刀がするりと落ちて、刀身は鞘の中へと滑りこんでいく。かちゃんっと妙に軽くはばきと、鞘口のぶつかり合う音が周囲へと響いた。
途端と
「おやまあ、残念ですねえ。」
それで少女と
その吐息を漏らす声が余りにも大きかったせいなのか、少女と
自然、何とはなしに
妙なものだが、同じく同行者の喧嘩早さに悩まされているのだろうと親近感を覚えなくもなかった。
二人が笑いあってるのを見て取って、
瞬間、不意と剣呑な気配を感じて咄嗟に
不意と
二人ともに刀を抜くような気はなかった。
だが、見つめ合っているうちに互いの間へと満ちてくる感情のようなものがあった。
ちらりと
彼女は
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