77.結城と石動十一
「ちょいとちょいと、貴方様がた。」
「ああん、なんだあ?」
話しかけた女性にがうまく引っ掛けられなかったことに苛立っているのか、多少
男達は振り返るや眉根を
「ひぃっ!」
太った男が情けの無い悲鳴を上げるや、次いで顎が痛んだのか「痛っ!」っと顎を咄嗟に抑えて顔を
それは昨晩に、宿で
「ぐええ……。」
小さく唸って男二人は気まずそうな表情を浮かべているのを、
「おや、貴方様がたでしたか、昨日あれだけ痛めつけられたのにも
「へへへ……。」
僅かに
「あ、いや、俺なにか、ちょっと用事を思い出しちまった……。」
「ああ、俺も……。ちょっとな。」
誰に言っているのか、言い訳めいた言葉を口にすると、男は二人慌てて
「なんなのですか?あの男達?私達を見て随分を慌てていたみたいですが、
その
「
「えっと……なにをですか?」
「何をも何も……。」
言いかけて
「まあ、気になさらずとも良いですよ。彼らも逃げて行ってしまいましね。それよりも。」
と、
そちらには男達に絡まれた女性がいるはずで、
「大丈夫でしたか?」
何とも親切そうに言った
一人は確かに妙齢の女性であったが、もう一人はずいぶんとちんちくりん――と言うか背丈の低い、幼い少女であった。おかっぱ頭で柔和な表情をして、
「あれ……えっと、貴女は確か……。」
頭の中で記憶を巡らせながら
「えっと、確かお二人は
そう少女に言われて、
「おや、貴女様でございましたか。ええと、確か、
「
言い間違われ慣れているのか、
「そうそう、
本当に奇遇であった。
昨日の黒羽織の男と同じ日に二度も出会ったことといい、何がしか彼女らとの奇縁でもあるのかと、多少なりに不穏なものを感じつつも、
その仕草は明らかに、少女へと近づく
「貴様。それ以上、局長に近づくな。」
女性の口から出てきたのは、酷く冷淡な声であった。
まるで氷を金具で引っ掛けたかのような、高く、鋭く、そして抑揚の消し去られた無感情な声で、端的な口調で
そして、その女は、
かしゃりと、鞘の中で刀身が擦れる音が響く。
局長と呼ばれていた少女は、その音に驚いて、慌てて女の袖口をぐいっと引っ張った。
「ちょ、ちょっと、
少女は思い切りに袖口を引っ張っているのか、指の先から布は大きな皺を寄せていく。それでも
睨み付けられた
先ほどまでの呑気に街を歩いていただけだったはずが、いつの間にか余りにも緊迫し始めていて、
いつの間にかだ。
いつの間にかこんなことになってしまっている。
道を歩いていただけのはずなのに、
緊張した空気を感じながらも、
密集していたはずの往来ではあったが、いつの間にか四人の周りに人が居なくなっている。
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