76.結城と石動十
「いやはや、なるほど。こうやって
「そう……でしょうか?」
「そうでございますよ。」
「ふふ、
屈託もなく
往来の向かい側からやってくる人の波を、
「そうですかね。」
「そうですよ?
「そうでもないとおもいますがねえ。」
ふむと更に一つ嘆息を漏らして、
「まあ、こうやって話を聞いて回っても、早々に人と言うのは見つかるものではないんですけれどね。」
ぽつりと言った
「そう言うものなのですか。普段ならどれほどかかるのです?」
「そうですね。探す相手にもよりますが、直ぐに見つかることは稀でしょうか。目立たない容姿とかだと
「
そう言って腕を組むと、
そんな
「私も
次第と往来に立ち並ぶ建物が人の寝泊まりするような建物の並ぶ居住区から、物品を商うような店々の連なる道へと差し掛かっていく。
二人の通りかかった道には、丁度、乾物屋やら野菜屋や酒屋などが
酒屋、染物屋、茶器屋と、種々色とりどりと並べられる物品を買い求めに来ているのか、往来は酷く忙しく人の行きかって、けたたましいほどに声が入り乱れ、何とも騒がしく賑わっている。
ふと、一人の男が道の向かいからふらりと歩いてきていた。
男はちらりと
それを道行く誰もが一瞥もせずに歩き去っていく。
男も男で、立ち上がって振り返り二人を恨めしそうな目でじいっと見つめてくるが、追手も来ずにただひたすらと黙って睨み付けてきている。
そんなことが普通に起きるほどに、人が入り乱れていて混沌として、そこは余りにも騒がしい往来であった。
「何と言いますか、何なのでしょうね今の男と言い、この慌ただしい雰囲気と言って、やはりどうもけったいな街でございますね。」
「この雑多な感じが良いではないですか。」
「こんな雰囲気を、良いと思えてしまうなんてのは、それはそれで最早人生の御終いみたいな感じがしますがねえ。」
片目を閉じながら眉を
「またそれは随分と手酷い言われようですね。」
「私とは性分が合わないってことですよ……っと?」
言いかけて、
「とと?」
つられて
立ち止まった
「ようようよう、茶を飲むぐらい軽く付き合ってくれても良いじゃねえか。こんなに頼んでんだぜ?」
それは何とも分かりやすく、女に絡んでいる男の典型的な台詞の一つであった。
「悪いですが、そんな
そうして、それに言い返すかのようにして、すぐに男達の背の向こう側から甲の高い女の声が聞こえてきた。それは随分と若い女性の声の様であった。この二つの会話だけで、
多少なりとも嫌気と、女性が絡まれていることへの憐れみがないでもなかったが、正直なところ面倒事を避けたいと
それだけで、多少なりとも
「まさか、女性が絡まれているから助けたい、とでも言うつもりですか?」
「女性が絡まれているから助けたいんですけれどね。」
「言いますか。」
「言いますよ。女の方が困っているなら、助けるってのが人情ってものじゃありませんか?」
「
「そこは否定はしませんがね。」
どこか澄ましたように目を細めると、
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