68.結城と石動二
寝室部屋から隣の部屋へと続く襖へと手を掛けて、すっと横に開ける。
「うぁ……。眩しい……。」
途端、
咄嗟に掌を
陽射しの流れを目で追って、窓へと視線を向けてみると、そこは一層に眩しく感じられたが、
眠る前後の記憶が無い
「おはようございます……。」
彫像の様にして静かに佇んでいる彼女の姿に、多少声を掛けることに戸惑われながらも、
「おや、お目覚めになりましたか。おはようございます。」
いつもの、
「どうしたんです?
襖の向こうで、何を
「良く、眠れましたでしょうか?」
部屋の雰囲気に
「ええ、ええ。おかげさまで寝られました。布団が良いと、ああも心地好く眠られるものなんですね。」
「ほんにぐっすりと眠られたようで。
くすりと
「うえ?」
後で水でも使って直さねばと思いながら、とりあえずは髪を撫でつけることを諦めて
「確かに私は良く眠れましたけど、むしろ、
問われて、
「なにを言うんです。私もちゃんと寝ておりますよ。」
「本当ですか?私からすると、
「さてね。歩きながらでしょうか。歩きながら寝ております。」
平静とした顔で
彼女のいつもながらの軽口ではあった。常と変わらぬような
「また、そう言って、筆殿は適当なことを仰いますね。」
「お気に召しませんでしたか?」
「気に食う、気に食わないというより、
わざとらしく溜息をついてしまいながら、
一方で肝心の
「本当のことなど、聞いたってつまりませぬでしょうに。」
「つまるつまらぬの話ではありません。私は
「私のことなど、知ったからとどうなるものでもありますまい。それこそ私など大層な人間ではありませんし、酷くつまらんものですよ。」
「知ることで信頼が生まれるとか安堵しますとかありますでしょう?だいたい、
床の畳を指三本先でとんとんとんと叩きながら
「そうでもありませんよ。私にとっては、
その声は至って真面目であったし、見つめてくる眼差しは真剣そのものであったが、
逆に
「いつも嘘やら冗談やらを言っている人は、そんな言葉も信用なりませんよ。」
そう言われて
「確かに、それはそうでしょうかね……。」
顎に手を当てて、ふむっと考え込んだ
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