67.闖入者五 - 結城と石動一
「飯の後には風呂にでも入ろうかと思うておりましたが、こんな無防備な人を置いておくわけにもいきませぬでしょうね……。」
先ほどの様に男たちが間違って入ってくるかもしれぬし、不逞の輩が押し入ってくるやもしれなかった。仮にそうなったならば、この状態の
膝と首元とに手を伸ばすと、その裏側へと掌を添えて、
柔らかい肢体の感触が指先へと伝わってきて、一層に
「このまま本当に押し倒してしまいたいのですがねえ。一応には約束をいたしましたし。この方には嫌われたくもありませぬしね。しかし、何とも軽いお体をしておりますよね。このお方は。」
黒松の上から落ちてきた時にも
部屋に敷かれた真新しい布団の、その掛布団を足先で払いのけると、ふんわりとした敷布団の上へと
「んぅ……。」
「さあ、お休みくださいな。数日駆けて、お疲れしましたでしょうし。今日ぐらいはゆっくりと御眠りください。」
言いながら
すうすうと
しばらくしても目を覚ますことなく、ちゃんと寝ている
再び窓の桟へと腰を下ろすと、小さく首を振って、溜息をつきながら夜空を見上げた。
丁度、薄く
* * *
十八
うつらうつらとぼんやりとした意識の中で、その半ば虚ろとした感覚に
昨日まで歩き詰めだったせいか全身を気だるさが襲い、もう幾許か目を閉じていたいという怠惰な感情が溢れてくるが、
「んぅ……。」
赤子がむずがるような声が小さく溢れ出た。
そんな喉から出た自分の声に僅かばかり驚いて、
ふらふらと頭を揺らしながら
寝室部屋の中には、布団以外には明かりをつける
「ふぁむ……。」
大きく開いた口を細長い掌で抑えながら、
どうして自分がこんな綺麗な布団の上で寝ているのか。
そのこと自体は
ただ、少なくとも
もう一つの部屋の方に居るのだろうか、それとも外に出てしまっているのだろうか。
前者であれば探す手間がなくて嬉しかったが、何となく彼女なら外に出てしまっていても不思議ではない気がしていた。名古屋は少なくとも街であり、遊ぶ店もあれば、食事をする店もある。ましてや、ごろつきに喧嘩を売るにも困らない。
布団をめくり上げて、
僅かに着衣が乱れていることに気が付いて、帯を整えながら、裾の布を引っ張って、身前の重ねを整えていく。
結局、自分は昨夜着付けた黄色地の着物を身につけたままに眠ってしまっていたようで、あちらこちらが皺になってしまっていること見つけて、折角買った服が台無しになってしまっていることに、起きたばかりだというのに、どこか気持ちが
とはいえ、もう起きたことにどうこうも仕方のなしと、頭を一つ掻いて、
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