66.闖入者四
「言いたいことがあるならば、ご自由にどうぞ。お伺いいたしましょう」
そう言ってみると、
短い
どこか酒精を含んだ甘い香りが鼻孔へと漂ってくる。
余りにも近くへと彼女の顔が寄って来たことに、
「急に何を……。」
戸惑って不意に開いた
それは酷く緩く柔い感触だった。
一体どういうことなのか。
気持ち良さを感じながらも
ここ数日の中で、男たちと斬り合った、どんな瞬間よりも
そんな
二人の口の中の唾液が絡み合って、唇の狭間で糸を引いた。
「ふぁむ……。」
口の中に甘く梨のような仄かな香りが広がって、それが喉から鼻の奥まで漂っていき、鼻孔を
一際に柔い下唇の端を
ふっと大きな吐息を漏らして、
それは余りにも
先ほどまで二人の肌が重なり合っていた、唇の端の濡れた部分へと指先を当てながら、
「前にしていただいた……確か『口吸い』ですか。あれは心地良かったです……。ほんに、良うございました。」
小さな声で呟きながら、
あまりに突然のことに、
はたと気が付いてみれば、
「
頬から耳の端までも顔を赤くしながらも、目を瞑って心地良さそうに寝息を立てている。
「んぅ……。」
軽く唸って身を捩りながら、くっと体を丸めると、
それは余りにも無防備で、まるで赤子のような寝姿勢であった。
いきなり口を吸って来たかと思うと、そのまますぐに寝入ってしまった彼女の態度に、
「まったく……、どういうつもりですか……。」
やれやれと独り言ちた
頬杖をついているのとは別の方の腕を伸ばして、
指先を当てるだけでくねりとしな垂れて、
くすぐったくなるような感触を楽しみながら
指の動かした勢いで、ふわりと髪先が舞い立つと、空気抵抗に揺れながら髪は舞うようにして彼女の肌の上へと降りていく。
絹糸を撫でるような、滑らかでさらりとした感触であった。
無垢な寝顔を見せて目を瞑る
「こんな無防備な姿を見せて、押し倒すな
「全く。恨みますよ……。こんなもやもやさせるだけさして、一人で寝るなどと……。」
頬杖をつきながら、
夜空には先ほどまでと変わらない星屑が一面に広がって揺らぐように瞬きながら、その一角には仄かに紫色に染まる天の川を横切らせていたが、ただ今見つめていると、どこか一層に明るく、余計に輝いて見える。余りにも
恐らくそれは、自分自身が興奮していて、感覚が鋭敏になってしまっているせいだろうと、
ただ、それでも気持ちは落ち着かずに、心の奥底は逆立った毛が風に撫でられるかのごとくに揺らいで、騒がしく鼓動を跳ねさせていた。
「駄目ですねえ……。全く持って駄目です……。こんなことでは。」
無理やりに目を閉じると
そして、目を開くと、再び
四肢を丸めて気持ちよさそうに眠る
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