62.酔いて五

 窪みの真ん中へと触れさせると、まるで吸い付くかの如くに、穴の周囲の肌がふでの指先を包み込んできた。まなじりをすうっと細めて、ふでは臍の中心へと向かって指を押し込める。そうして、くっと指先をまげて、その肌を擦っていく。


 途端に、腹部の奥底がきゅうっと窄まる感触に襲われて、桔梗ききょうは眉間に皺を寄せながらびくりと体を震わせる。


「ひぅっ……。」

 くねりと桔梗ききょう桔梗ききょうは体を捩らせて、奇妙な声を上げた。

 それは気持ちよさそうにも痛そうにも聞こえる、不思議な響きの声だった。


「あぅ……筆殿ふでどの……変なとこに触らないでください。」

「撫でているだけでございますよ。ここは駄目ですか?」

「なんか、お腹の中がぞくぞくしちゃいます……。」

「気持ち良いのではなくですか?」

「気持ち良くは……あの……えっと……とにかくやめでください。」


 更に触れようとして来る手を止めようとして桔梗ききょうが腕を伸ばすと、その腕をふではくっと捕まえて、引っ張り上げった。


「ふあ?」

 驚く間もなく、桔梗ききょうの体はくるりと回転させられて、ふでの顔へと向けられていたはずの視線が、いつの間にか宿の部屋の中を見つめていた。


 回転させられた眩暈めまいと、酒に酔った勢いとで、いつの間にか桔梗ききょうは姿勢を崩してしまい、ふらりと後ろへと倒れ込む。その体はふでの胸元へとぽすんっと背中をぶつけていた。


 すぐにそれをふでの腕が抱き絞めた。


「うあぅ……。と、筆殿ふでどのぉ……。急に何するんですか。びっくりしますよ。」

 桔梗ききょうが無理やりに体を回された不満を口にすると、ふでは素知らぬ顔をして見せる。


「いえね、なに。この方が触れやすいと思いましてね。」

 後ろから抱き留める形になったふでは眉を一つ上げて見せながら、軽く口元を緩めた。


 先ほどと同じようにして着物の狭間へと腕先を突っ込むと、再びさらりと腹部へと掌を振れる。そのままふでは指先を滑らせると、そのまま体の側辺を通って上の方へと、ゆるりとした手つきで撫で上げていった。


 緩い曲線を描いたくびれから、肋骨の浮いた感触が指先に触れるところまで掌を滑らせる。


 一番下の強く曲線を描く肋の上を指先で伝わせて、そこから、二本目、三本目へと段々となった体の上を撫で上げていくと、四本目に触れるあたりで、ふでは一層とふくよかな肉の塊へと触れるのを感じた。


 柔く豊かな乳房の外縁部であった。

 指先だけで触れていた桔梗ききょうの肌へと掌を広げ、乳房の下端の膨らみへと触れていく。


 ふよりと柔らかく乳房は掌の触れるがままに形を変えて、弾力をもってふるりとその身を震わせた。


「あ……そこは……。」

 酒の酔いで朱に滲んでいた頬を一層に赤くすると、桔梗ききょうは唇をんで恥ずかしそうに顔を俯かせた。


「ここも肌でしょう?」

「それは、そうですが……。でも……。」

 言葉を濁し、もじもじと膝頭を擦り合わせて、桔梗ききょうは首を振る。


「撫でるだけですよ。」

 甘く緩い笑みを浮かべてふでは、桔梗ききょうの耳元で穏やかな声を響かせた。


 ゆるりとふでは指先で乳のふくらみの外縁部を撫ぜていく。


 胸元と乳房との境目、下乳の付け根をふでが指の先でなぞっていくと、普段触れることのないところへと触れられる感覚に、桔梗ききょうは僅かに唇を噛んでしまう。


 そのまま指をたゆませると、乳房の曲線へと合わせるように掌を触れさせて、その膨らみを包み込んでいく。

 下端から先端へと向かって、するすると何度もその膨らみの表面を撫ぜた。


「んっ……んぅ……。」

 まぶたをぎゅっと瞑った桔梗ききょうは、耳の先までを真っ赤に染めると、唇を小さく噛んで吐息を漏らしてしまう。


 胸の双丘の狭間を、ふでの細長い指先がするりと抜けていく。

 ぴくっと桔梗ききょうは背筋が震わせて、「あぅ……」と軽い嬌声きょうせいを漏らしながら体を反らせてしまう。


 たわみを見せる乳房を下から掌で掬いあげながらすいっと持ち上げると、たぷんっとふくよかに肉袋が揺れて、その肌に柔そうな波をうたせていた。

 指先を更に持ち上げて、撫で上げると掌から乳房が零れ落ちて、ふよりと弾力を持ってその身を跳ねさせる。


 その双丘は酷く柔らかかった。

 指先で触れるだけで、その肌の中に埋まっていき、下から撫で上げればたゆんっと揺れて、先端の桜色をした突起を可愛らしく震えさせる。


 きゅっと掌に力を籠めるだけで、大福よりも容易にその姿形を変えていく。その心地が良くて、ふで桔梗ききょうの乳房を幾度も撫でていった。


「あっ……筆殿ふでどの……そんな胸ばかり……。」

 喉の奥から甘く揺れた声を桔梗ききょうが震わせる。


 次第と桔梗ききょうの胸の先が、ぷっくりと頭をもたげて硬くなっていき、着物の布を押し上げる。

 いつのまにか、服が乳房の曲線の先端に、際立つ程の突起の皺を作り出していた。


 くっきりと服に浮き立った膨らみの皺を見て取って、彼女が心地好くなっているのを感じふでは思わずも目を細めてしまう。

 おもむろにその先端へと指を伸ばして、その側面へと指先を沿える。小さくくっと指を曲げると、ふでは直ぐにつんっと指先を伸ばして、胸の先の突起を弾いた。


「ひゃぅ……!」

 それだけで、面白い様に桔梗ききょうの体はぴくんっと震えた。


 ふるふると首を振りながら、どこか責めるような目つきで桔梗ききょうふでの顔を見上げていた。

 それはさながら雨に濡れた子犬のような目つきであった。


「痛かったですか?」

「いえ……びっくりしただけで……その……。」


 それ以上は桔梗ききょうは何も言わなかった。何も言わずに恥ずかし気に顔を俯かせる。恐らくは弾いたのが心地よかったのだろうとふでは悟って、掌を再び桔梗ききょうの乳房へと触れさせる。


 肉房の付け根から、徐々に先端へと向かって指先を細めていきながら撫でていく。

 薄紅に色づいた乳房の先端をすっと摘み上げると、桔梗ききょうはふるふると背筋を小刻みに震わせる。


 ぴんっと指先でその突起を弾くと、途端に桔梗ききょうはびくっと背筋を大きく反らせた。


「あぅ……。」

 僅かに桔梗ききょうの嬌声が漏れた。


 右手で乳房を包み込ませながら、ふではもう片方の手を桔梗ききょうの帯の下から着物のすその狭間へと入り込ませる。


 ちらりとすそをめくり上げると、薄っすらと暗い布の下から、桔梗ききょうの白い太ももが露わになった。


 肉付きの良い太ももへと指先を伸ばして、掌を触れさせると、不意に桔梗ききょうの足がびくりと内股を閉じて、もじりと膝頭を擦れ合わせた。


 勢いふでの指先は、桔梗ききょうの太ももへと挟まれる形となって、一層に柔い感触が伝わってきてしまう。


 桔梗ききょうはどこか恥ずかしそうに顔を赤くして、くっと唇を噛んでいる。


「そっちは……あの……。」


 ふいと、躊躇いがちに桔梗ききょうは口を開いた。

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