14.秘密六 - 道行一
ふっとそこで、自分の考えていることのはしたなさに、
「何考えてるんだろう……私っ……。」
呟いて気を取り直すと、受け取った
脇の下を洗い、体の側部をなぞって、そうしてお腹へと米糠を伝わせる。
右わき腹へと手を伸ばした瞬間、
塞がり切っていない腹部の傷に米糠の汁が染みていた。
思わず眉を顰めて辛そうに
腹部に手を当てて唇を結んで痛みに耐えていた。
ふと、そこで、先ほど
思わず
湯に浸かった
その顔は一見に美人だったが、
*
七
風呂から出て部屋に戻った
一応に肌着は身に着けていたが、着物は着ずに薄っぺらい布団の上でうつぶせに倒れ込んでしまっていた。あまりにも布団が薄いために、寝ている部分が痛いような気がしながらも、それでも立って居るよりはマシと体を横たわらせている。
「うう……。」
うつ伏せになった
体を洗い終えて湯船に入った後も、結局なんやかんやと
更に言えば、ただただ胸を揉まれていただけなので、何か体の奥が物足りずに
「うう……あう……。もう何をどうしたら……。」
思わず
外から涼し気な風が流れ込み、風呂上がりで熱くなった肌を心地好く撫でていく。
微かながら頭が冷まされる感じがして
「気分の良い風ですねえ。」
同じように窓から吹き抜ける風に爽快さを感じながらも、傍らにいた
一瞬、
綺麗だ――
と
こうやって黙って佇んでいれば、綺麗な部類に入るだろう。
ただ、絶対に黙ってはおらぬし、静かに佇んでいることもありえずに、それが筆と言う女性をどうにも如何わしいものに感じさせていた。
軽く頭を揺らし、結いだ髪が揺れないのを確認すると、
「それでは、そろそろ宿を出ましょうか。」
風呂であまりにも疲れさせられてしまったがために、もう少しだけでも休みたい気持ちが強かったが、
それでも体のだるさに、はあっと再び溜息をついていた。
「それとも今日は休みましょうか?
そう言って
「い、いえっ……。」
寝てしまいたいのは山々だったが、彼女と
「疲れてますが……行きましょう。急がなくてはいけませんし、それに夜を駆けた方が追手も見つけ辛いでしょうから。」
ぎくしゃくとした動きで窓辺へと近づくと、
手に取ってみると、まだ乾ききっておらずに指先にしけった感覚がして、
びちょっとした感触が肌に吸い付いてきて気分はあまり宜しくなかったが、仕方ないと襟を整える。
「左様でございますか。」
鼻を掻きながらどこか残念そうに
袴を履いて腰へ刀を差した。
鞘の紐を帯へと結びつけると、腰をかがめて袴の裾についていた埃を払う。
そうして彼女は最後に、部屋の片隅に置いていた笠を手に取った。
それで準備はおしまいであった。
それ以外に持っていこうとするものはないようで、
「行きますか。」
「行きましょうか。」
二人頷いて、部屋を出ることになった。
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