第41話 間一髪

 ……軍の病院、手術室前……



 しばらくするとランプが消えて、マスクを着け、台の上で倒れ続ける3人が病室へ運ばれ、医者が出てくる。


「3人の容態は?」

「体内のあらゆる力が抜けた事による、所謂貧血みたいな物。2、3日で目覚めるだろう。」


 舞姫達は喜びの声を上げる。


「でももしかしたら記憶を失っているかもしれない。心しといて頂きたい。」



 ……2日後の4月14日、朝9時……



 夏雅璃弥は病室の一室で目覚める。右手首には点滴が打ってあり、服は着替えてあった。


「ここ、は……?」

「目が覚めたのね、今先生を呼んで来るわ!」



 ……10分後……



 夏雅璃弥はベッドの上に座り、医者の話を聞いていた。


「体は動くみたいだね、じゃあ次。これ何本?」

「……3本。」

「良し、次、君の名前は?」

「……夏雅璃弥。」

「この人の名前は?」


 医者は隣に座っている炎轟を見る。


「……分からない。」

「どうだ?」

「記憶喪失に間違いない。残りの“2人”も同じです。」

「……そうか。」

「2人……?」

「君の弟の孔醒と妹の真梛羅さ。」

「……会ってみたい。」

「良いよ、それに今から3人を大きな部屋に移すから嫌でも一緒になるけどね。」



 ……10分後、A棟8F A-1号室……



 その部屋はホテルの一室みたいな部屋で、真梛羅と孔醒がソファに座っていた。


「この2人が?」

「ああ、今から3人で話でもすると良い。俺達は仕事に戻る。」


 2人は部屋を後にし、夏雅璃弥は扉を閉めて2人に近付き、無言で2人を抱き寄せる。真梛羅から優しい花の匂い。孔醒からは松のような落ち着いた匂い。夏雅璃弥からのお日様のような優しく温かい匂いがした。

 3人は目を閉じ、涙を零した。

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