第38話 笑顔と涙

「―――。―――。真梛羅。」

「……。」

「着いたぞ。」

「さて、と。着いてこい。」


 4人は車を降りる。そこは何処かの洞窟で、中央に血のように赤い城が立っていた。


「“ブラッドキャッスル”……。」

「ああ、これから取った。元は残虐で血が好きな王が納める国だったらしい。まずはこっちだ。」


 真梛羅達は城に入り、1Fの最奥の部屋に行く。

 そこは奥に黒い大樹が生え、天井や壁、床に根や枝が張り巡らされていた。


「まずはここで“記憶を失ってもらう”。兄妹仲良く昔話でもしながら眠ると良い。」


 3人を部屋に残して百鬼達は扉を閉める。

 すると、床から黒い手のような物が伸びてきて、3人を捕まえて引っ張り、俯けにして床に抑え付ける。


「ガハッ!!」

「何、だ、これ……。」


 手が触れている頭、背中、足から根のような物が3人に纏わり付く。



「2人共、ごめんね……?私が諦めちゃったから、2人まで……。」

「何、言ってやがる。俺達は、それに賛同した。もし、助かって、皆に。怒られる時……は一緒、だ。」


 泣きながら謝った真梛羅に夏雅璃弥が涙を流しながら答える。


「そうだ……。真梛羅だけ、怒られるのは、おかしい……。それに、仮に……助からなくとも、皆は守れるし、“3人一緒”だ。何も……怖くない……。」


 孔醒も涙を流しながら答える。


「記憶を、失っても……“兄妹”で、居よう……?」


 3人は笑顔で涙を流しながら目を閉じた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る