第36話 生還

「真梛羅!!」

「ただいま、皆♪」

「……ったく、人の留守中に何やってんだ。」


 夏雅璃弥が玄関側の廊下から腕を組んで歩いてくる。


「「「夏雅璃弥!!」」」

「よお、怪我ねぇーか?」

「全く以ってその通りだ、迷惑な物だ。」


 孔醒が屋敷の奥の方の廊下から手を腰に置いて歩いてくる。


「「「孔醒!!」」」

「久し振りだな、元気にしてたか?」


 それと同時に軍と警察が中庭に雪崩込み、3人を抑える。

 煉叡が真梛羅と舞姫の後ろに現れ、真梛羅は煉叡にゆっくりと倒れる。


「真梛羅!!」

「大、丈夫……ただの、立ち眩み……。」

「はぁ~……。だから大人しくしてろって言ったんだ。」

「俺達を回復させる為に大部分の妖力を俺達に注いだからな~……。ったく、情けない。俺達一番先に起きていればこんな事には……。」

「ああ……。」


 夏雅璃弥は真梛羅の所に行き、頭を撫でる。


「ゆっくり休め、ありがとな……。」


 真梛羅は眠りへ落ちていった。その時、一発の銃声が鳴り響く。


「っ……。」


 その銃は百鬼が真梛羅に撃った物だった。

 しかし、着弾したのは夏雅璃弥の右手だった。


「「「夏雅璃弥!!」」」


 夏雅璃弥はその場に倒れる。銃弾の着弾地点から血管の色が紫になっていく。


「夏雅璃弥、しっかりして!!」

「無駄だ、そいつは銃がトラウマ。それにこの着弾は毒弾。撃たれた所から侵される……!!じゃあな、また会おう。」


 百鬼達は黒煙に包まれて消える。

 麗菜達は夏雅璃弥に駆け寄る。


「おい、しっかりしろ!!」

「クソ、もう首まで……!!」


 九尾姿の真梛羅が目覚め、夏雅璃弥の向かい側に寝転ぶ。



「もう、誰も失わない……。」


 真梛羅は元凶である右手を胸元に近付ける。

 すると、血管は元に戻っていく。


「良かった……!」

「良く、ない……。」


 夏雅璃弥は起き上がり、真梛羅を抱き寄せる。


「俺の、所為で、真梛羅が、弱って……」


 夏雅璃弥は気を失った。

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