第33話 3つに別れた運命

『お父様、このままでは私達は滅んでしまいます。』

『それにこの子達に次期頭首を背負わせるのは荷が重いかと。』

『分かっている。そしてこの2人には少し辛い人生を歩んでもらう。いつか“己の居場所”を見つけるまで……。』


 白泳が2人の男の子の頭を撫でれば2人は眠りに落ち、倒れる。


『響輝は分家。煥斗は記憶を消す。望美は……国に預ける。俺とてこんな事はしなくない。だが、百鬼に捕まえられ、殺されるくらいなら、この子達を騙してでも逃がす。そして、頭首は2時間後に産まれる望美だ。さぁ早くその2人を逃がせ。その2人の存在を知られてはならない。』


 白泳以外の者は2人を連れて屋敷を立ち去る。


『……煉叡。』

『呼んだか?白泳……いや、我が主。』

『望美を次の主にする。ブラッド・キャッスル“参謀の百鬼”。“紫塔しとうの瑠卸”。“緑塔りょくとうの惰邪”。“黒塔こくとうの晴螺”。この4人が直々に手を出して来た時、死ぬ気で守れ。それ以外の時は影から手を貸してやってくれ。』

『……仰せのままに。』


「「ううっ、ぐっ……!」」

「この事を知った俺は記憶がない事を良い事に真梛羅に“生き別れた兄”として接触した。いや~実に滑稽だった。」

「貴、様……!!」


 夏雅璃弥は立ち上がり、百鬼に殴り掛かるも右脇腹を狙った蹴りを入れられ、吹き飛び、壁に叩き付けられる。

 夏雅璃弥の傷口が開き、血が口と腹部から流れ続け、気を失い、血が畳を赤く染める。


「夏雅、璃、弥……!!」

「人の心配をしてる場合か?」


 百鬼が孔醒の腹部に蹴りを入れ、孔醒は怯む。


「うぅ……ぐっ……!!」

「次は―――」


 百鬼は真梛羅の左足を右足で踏み潰そうとする。


「辞めろ、真梛、羅……!?」


 孔醒は首に刀傷を負わされ、横に倒れる。首から流れ出る血が布団を赤く染める。

 百鬼は真梛羅の左足の骨を砕き、刀で腕を深く斬る。


「クク、気を失っているのに眠っているみたいだ。このまま永遠の眠りに就かせてやろう。」


 百鬼は真梛羅の首を狙って刀を突き刺そうとする。その時―――


『グアアアアアアアアァァァァァァァアアアアアアアアアアアア!!』


 煉叡は百鬼を右前足で部屋の外へ吹き飛ばす。真梛羅の首を突き刺そうとしていた刀は粉々に砕ける。


「……ふっ、やはり間に合わなかったか。じゃあな、また会おう。」


 百鬼は黒煙に包まれ消え、煉叡の叫び声を聞いた舞姫達が部屋の入口に集まる。


「煉叡、何があったの!?」

『あの小僧、絶対に消してやる……!!舞姫、早く3人を治療してくれ!!』

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