第32話 記憶の穴

「ちょ、ちょっと待てよ……。何か、嫌な感じがする。」

「俺もだ……。おい、煉叡。」

『聴こえてた。俺の記憶では一人っ子のはずだが、ここまで来ると疑いたくなる。幾つか資料がある。位置から読み直してみよう。』


 煉叡は尻尾の中から幾つかの本を取り出し、孔醒に渡す。

 夏雅璃弥はゆっくりと起き上がり、真梛羅を少し離して寝かし、孔醒と共に本を読み始める。


「家系図だ。」

「分家に、俺の名がない……?」

「お、おい……。ここ、見ろ……。」


 夏雅璃弥は本家の家系図を指差す。そこには“長男 煥斗あきと。次男 響輝。長女 望美”と書いてあった。


「俺達が「兄妹……?」


 ―――キィィィィィィィン……。


 夏雅璃弥は視界が歪み、孔醒は頭痛がし、煉叡はその場に倒れる。


「お、おい、煉、叡……!しっかり、しろ……!」

「思い出させてやろう、“本当の記憶”を……。“忌々しき白泳に封印された記憶”を……。」

「何者、だ……!!」

「全てが分かる……。この記憶を取り戻せばな。」

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