第23話 拳銃への恐怖

 孔醒は力が抜け、ゆっくりとその場に座り込み、夏雅璃弥も孔醒を支えながら一緒にその場に座り込む。


「巡査、一体何を……!!」

「落ち着け、孔醒の左腕を良く見ろ。」


 舞姫達はゆっくりと孔醒の左腕を見ればそこには待ち針のような針に赤紫色の綿のような物が刺さっている。


「眠らせただけだ、まぁこの銃に合ってないから当たるか分からなかったが……狙い通りだったな。」

「な、何言うてるんや!!失敗したら本間に死「弾、入ってないのにか?」


 唔天はマガジン(弾倉)を開ける。マガジンの8本の穴には弾が入ってなかった。


「それに外れても1~2mm。間違えて心臓に当たったりはしない。これでも巡査だからな。銃は、銃の扱いには慣れてる。」


 唔天はマガジンを閉め、腰のベルトに引っ掛ける。


「……夏雅璃弥、大丈夫か?」

「い、今の……が、拳、銃……?」


 夏雅璃弥は恐怖の目で唔天を見ながら、震えながら、震える声で問う。


「……ああ。」

「ほ、本当に……孔醒、は死んでな「ああ、死んでない。眠ってるだけだ。」

「そ、そう……か……。」

「……悪かったな、夏雅璃弥。……席、外す。」

「夏雅璃弥、だ、大丈夫か……?」


 朴滋は夏雅璃弥の右肩に手を置くも夏雅璃弥の体は氷のように冷たい。


「つ、冷たっ!?」

「朴滋、毛布取っ「だ、大丈夫……。心配は、無用……だ。」

「何言ってるの!?火竜は体を冷やすと死ぬんでしょ!?」

「これぐらい、問題……ない。」


 夏雅璃弥は震える足で立ち上がり、出口へ向かう。


「夏雅璃弥、ちょっと待っ「部屋、籠る。」


 夏雅璃弥は自分の部屋へ、壁にもたれながら歩いていった。



 ……夏雅璃弥の部屋……



「はぁ……はぁ……。」


 ベッドの上で布団に潜り、怯える。

 あれが、銃……。息が、苦しい……。

 恐怖で意識が遠くなっていく。

 ああ、クソ……。俺の感覚、が……。

 力が抜ける。


「助けて、くれ……。」


 誰かが夏雅璃弥のベッドに座る。

 夏雅璃弥は驚き、起き上がれば目の前に舞姫が夏雅璃弥を見ていた。


「舞、姫……。」

「触っても良い……?」

「あ、ああ……。勿、論だ……。」


 舞姫は夏雅璃弥を優しく抱き寄せる。


「大丈夫、私で良かったら話、聞くよ?」

「怖、かった……。指一本、触れず、に……仲間を、消せ、る……。“また”俺の、“目の前”、で……。もう、嫌……だ。誰……と、も会いたく……な、い。今度は……俺、が。」

「……大丈夫、夏雅璃弥が恐れている事には絶対ならないよ。」

「っ……。」


 夏雅璃弥は涙を流し始め、舞姫は優しく頭を撫でる。


「……大丈夫よ、大丈夫、安心して。」


 夏雅璃弥はゆっくりと大人しくなり、涙が止まり、目を閉じる。

 舞姫は夏雅璃弥を寝かし、布団を掛ける。


「……怖い時はいつでも泣いて良いのよ?」


 舞姫は少し怯えた顔で眠っている夏雅璃弥の頬に手を当てれば夏雅璃弥の体は熱を取り戻し始めていた。


「……舞姫。」

「元帥!」

「……それじゃあしばらく預かる。」

「……うん。」

「唔天にはきつく言っといた。悪かったな、そいつにも伝えといてくれ。」

「……うん。」

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