第24話 夏雅璃弥の素顔

「夏雅璃弥、大丈夫……?」

「寝込んでるわ。そういえば、煉叡は?」

「着いていったぞ。」

「でもビックリ……。夏雅璃弥って寝込む事あるんだ~……。」

「何言ってるの、夏雅璃弥は他人恐怖症なのよ。」

「「えっ……?」」

「孔醒に話は聞いてたが、ここまでは……。」

「……今回はトラウマの方よ。」

「トラウマ……?」

「うっ、ぐっ……。」


 布団で眠ったまま震え、冷汗を掻き、うなされている。

 舞姫が布団から出ている夏雅璃弥の右手に触れば夏雅璃弥は落ち着き、呼吸が安定する。


「孔醒の話では両親を“銃で”、“目の前で”殺されたらしい。」

「「!!」」

「夏雅璃弥が5つの時の話よ。それに元々は私でさえ拒んでたわ。」

「俺に最初は何も話してくれなかった。こいつが心を開く者は1人も居なかった。俺達と居ても無口で無表情。手はいつも震えてた。」

「今と、真反対……?」

「ああ、自殺をしようした事もあった。」

「「!!」」

「あの一件以来、性格がガラッと変わった。過去と向き合うようになった。その時に麗菜が来たんだ。」

「そういえば夏雅璃弥の寝顔、いつも苦しそうだった……。」

「寝る前にいつも思い出してたんだ。相当辛かっただろうな……。だが、真梛羅が来てからは思い出してないらしい。」

「“俺より大きな物を抱えてる。だから俺はこんな所で負けてられない。これからは俺の大切な物、誰にも奪わせない。”って。夏雅璃弥は過去の自分を真梛羅ちゃんに重ねてるの。だから、私達と居る時以上に優しく出来る。」


 舞姫は立ち上がろうと夏雅璃弥から手を離せば夏雅璃弥の手がピクッと動く。


「くっ……。」


 夏雅璃弥がゆっくりと起き上がるもいつもの夏雅璃弥とは別人のようで、下を向いたまま何も言わず、両手で額を抑えていた。


「ごめん、起こしちゃったね💦」

「その声、舞姫……か。2人はどうなった……?」

「唔天と炎轟が軍に連れて行った。煉叡も一緒だ。」

「そう、か……。」


 ―――プルルルルル……。


「ちょっとごめんね。」


 舞姫は廊下に行こうとするも夏雅璃弥が両手を額から離し、右手で舞姫の左手を掴む。


「!」

「行かないで、くれ……。」

「ふぅ~……。仕方ないわね。」


 舞姫が夏雅璃弥のベッドの枕を椅子の上に置いて座り、電話に出れば満足したのか夏雅璃弥は手を離す。


「もしもし?」

『俺だ、唔天だ。』

「2人の様子は?」

『今寝た所だ、2人の具合だが―――』


 ―――ドサッ。


「夏雅璃「静かに、眠っただけよ。」

『どうした?今、ドサッって音しなかったか?』

「ううん、何でもないよ。で、2人の具合は?」


 舞姫は左手で夏雅璃弥に布団を掛け、頭を優しく撫で続ける。


『真梛羅の方は問題ない。孔醒の発作だが、どうやら呼吸が苦しくなるらしい。気絶したのは初めてだったからだ。孔醒の鎮静剤だ。出来次第、そっちに送る。』

「分かった。」

『夏雅璃弥の方は、どうだ……?』

「……眠ってるわ。」

『悪かった、まさかトラウマとは思っていなかった……。』

「もう大丈夫よ、言ってなかった私も悪いわ。」

『……そうか。』

「そういえば“あの子達”はどうなったの?」

『ああ、一応軍で預かってる。預かるか否かは皆で話し合ってくれ。』

「うん。」

『ちなみに真梛羅と孔醒は結構親しくなってるぞ。』

「了解、それじゃあまた今度。」

「あの子達って……?」

「新しい子達よ。吸血鬼の香錬かれん。妖狐の由優ゆう。土蜘蛛の河維斗かいと。天狗の赴鳥麻ふうま。人魚の汐里しおり。猫娘のみどり。雪女の津羽軌つばき。天邪鬼の芽絿めぐよ。」

「今度は妖怪……?」

「天邪鬼って……?」

「人の心を覗くらしい。」

「夏雅璃弥には起きてから話そっか。4人はどう?」

「このタイミングは危ないじゃない……?瑠卸達が―――」

「その心配は無用よ、この屋敷に張る結界を強化し、増やす事にしたから。」

「じゃあ賛成!」

「ああ。」

「うん♪」

「勿論♪」

「分かったわ、じゃあまずはこの状態をどうにかしないとね……💧」

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