第19話 悪夢

『居たぞー!!半人だー!!』

『真梛羅、走れ!!』


 8歳ぐらいの百鬼が2つ下の真梛羅の手を取って走り出す。


『百鬼、あれ……何!?』

『あれは人間だ……!!奴等に捕まってはいけない、とにかく走れ!!』


 百鬼の右足が下の方から飛んできた矢に貫かれる。


『百鬼、大丈『馬鹿、走れ!!絶対に止まるな!!』



 真梛羅は涙を流しながら百鬼に従い、ひたすら走る。


『そうだ、ひたすら走れ……。もっと、遠くへ……!?』


 山がみるみる炎に呑まれていく。


『あの人間共、山に火を放って俺達を焼き殺す気か……!!』


 百鬼は立ち上がり、矢が刺さったまま走り出す。しばらくすると、真梛羅が人間に捕まっていて泣いているのが見えた。


『真梛羅……!!』

『へ~、結構人間に似てるんだな。』

『嫌だ、離して、離して!!』

『俺の妹に、近付くな―――!!』


 百鬼は衝撃波を発生させ、人間の二人組に当てる。


『しまった……!!』


 真梛羅はそのまま崖の下にある大きな川へと落ちていく。


『百鬼―――!!』

『逃げて、生き延びろ……。俺の、分まで……。』


 百鬼と人間達は炎に呑まれた。

 真梛羅は川に落ち、流れていく。泳ぎ方も、息の仕方も分からず、沈んでしまった。



「……。……ら。……して。……え。……真梛羅。……しっかりして。ねぇ!!真梛羅ちゃん、しっかりして!!」

「!!」


 真梛羅は煉叡の体にもたれ、冷汗を大量に掻き、震えていた。

 真梛羅の目の前は舞姫が真梛羅の両肩に手を置いて切羽詰まった顔で目線を合わしていて、麗菜と孔醒、夏雅璃弥、朴滋、櫂麻、渓御、煉叡が心配そうに見ていた。


「みん、な……。」

「大丈夫……?」

「凄くうなされてたっすよ……?」

「……そ、そっか。夢、だったんだ……。っ!?」

「「「「「真梛羅!!」」」」」


 真梛羅の咳は止まらず、酷くなっていく。

 真梛羅が口を抑えながら目を閉じて咳込み続けていれば真梛羅の両手からポタポタと血が滴る。


「血……!?」

「孔醒、巡査に連絡!!」

「お、おう!!」

「夏雅璃弥はタオルをありったけ集めて!!」

「ああ!!」

「朴滋はこの屋敷内と周辺の警戒、渓御は応急処置を!!」

「「分かった……!!」」


 孔醒は本部室へ走り、夏雅璃弥は風呂場。

 朴滋は玄関に行き、渓御は真梛羅の両肩に手を置いて、能力で血を止めようとする。


「舞姫、私はどうすれば……。」

「……一緒に居てあげて。今は独りにしちゃいけない……。」

「タオル、持ってきたぞ!!」

「貸して!!」

「真梛羅、どうしちまったんだ……!?」

「分からない……!!」

「真梛羅!!」


 徐々に咳が治まるが、血の勢いは止まらない。

 それを見た唔天が沢山の錠剤の入った小瓶を取り出す。


「夏雅璃弥、真梛羅の手、退けろ!!」

「あ、ああ!!」


 舞姫、麗菜、渓御は真梛羅から離れ、夏雅璃弥が真梛羅の手を無理矢理口元から離し、唔天は真梛羅の口に1つの薬を押し込む。


「真梛羅、薬だ!!飲み込め!!」


 真梛羅が口の中に押し込まれた薬を飲み込めば咳も血も完全に治まり、苦しそうに息をする。


「真梛羅!!」

「真梛羅の血、しっかりと拭いてやってくれ。後、水を飲まして落ち着かせろ。」


 夏雅璃弥は麗菜と一緒に真梛羅の手や口に付いている血をタオルで拭き取り、渓御がコップに水を入れて持ってくる。

 唔天は水を受け取り、少しずつ真梛羅に飲ます。


「パトロールで近くに居て良かった……。」

「巡査、それは……?」

「鎮静剤だ、真梛羅の発作を止める為のな。舞姫、これからはお前が持ってろ。絶対に肌身離さず持っていろ。」

「発作って、一体何の……?」

「話しといた方が良いだろうな……。とりあえず全員をここに集めろ。これからも真梛羅と一緒に暮らす覚悟があるのならな。」

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