第18話 風邪
『大丈夫か?』
真梛羅はいつもベッドの上で掛け布団を被って眠っており、煉叡はベッドの直ぐ横で丸くなっていた。
「煉、叡……。」
『まだ寝てろ。』
真梛羅は左手で煉叡の顔に触れる。
『どうかしたか?』
「こっちの方が、落ち……着く……。」
『そうか、だがちゃんと寝てないと怒られるぞ。』
煉叡は尻尾を真梛羅の布団の中に入れ、真梛羅の頬を撫でる。
真梛羅は左手を引っ込めて、煉叡の尻尾にくっ付いて静かに眠る。
『こんなに幼いのに、こんなにか弱いのに我が主……。色々と苦労するだろうな……。』
「煉叡、おはよ。真梛羅の具合はどう?」
『渓御か。今、寝かし付けた所だ。相当辛いだろうな……。』
渓御は真梛羅の近くに行って横に座り、頭を撫でる。
『あいつの件はどうなったんだ?』
「軍で舞姫、唔天、炎轟で話をする事になったわ。朴滋も一緒よ。朴滋ならここに何か異常があれば直ぐに感じ取れるから。」
真梛羅がゆっくりと起き上がる。
「真梛羅!」
「行かなきゃ、室長達が……。」
真梛羅は龍涙を取って立ち上がろうとするが、煉叡が尻尾を体に巻き付けて止める。
真梛羅は力が抜けて、龍涙を床に落とす。
「行か、せて……。室長達を守、らなきゃ……。」
『その体で行っても足手纏いになるだけだ。』
「大、丈夫……。私は強い、から……。」
「大丈夫、あそこは軍の施設。沢山の軍人が居る。だから大丈夫、皆無事に帰って来るよ。」
『それに炎轟は元帥。心配は無用だ。今は自分の心配をしろ。周りを心配するのは回復してからにしよう。』
真梛羅は少し目を閉じ、苦しそうに息切れをする。
『ほら見ろ、無理するからだ。』
煉叡は真梛羅を寝かして離し、渓御が布団を掛ける。
「煉、叡……。渓、御……。」
「もう外に出掛けても良くなったから、風邪が治ったら遊びに行こう……?」
「うん……」
真梛羅は布団の中へも潜り、再び煉叡の尻尾にくっ付きながら眠りに落ちた。
「煉叡は風邪引かないのか?」
『俺は霊獣。病にはならない。』
「そっか、じゃあ孔醒に報告してくるね。またしばらくしたらご飯持ってくるよ。」
『分かった。』
『今日は丸1日寝てるな、昼間は起きなかったし……。』
「よお、真梛羅、どうだ?」
『朝少し起きたが、それからずっとこの調子だ。』
「そうか……。」
『舞姫は大丈夫か?』
「舞姫は今、風呂入ってる。しばらくしたら来るだろう。」
『分かった。』
「朴滋!」
「ただいま、渓御。」
「お帰り、お疲れ様。」
「ああ、少し疲れた。真梛羅、まだご飯食べてなかったのか?」
「朝と昼も食べてないよ。」
渓御は真梛羅の食事を乗せたトレーをパソコンのある机の上に置き、ベッドの近くの椅子に座る。
「と言う事は……今日は何も食べてないのか?」
「水も飲んでないわ、相当しんどいみたいで全く起きないの。」
「う~ん。」
『咳は治まってきてる。息は荒いままだがな。』
真梛羅が煉叡の尻尾を引き寄せる。
『お、わっ……。』
「大変だな。」
『ちょ、ちょっとだけ、な。』
「そういえば麗菜達は?」
「麗菜は櫂麻と買い物。夏雅璃弥は格技室。孔醒は本部室よ。」
「格技室?」
「“負けてばっかで腹が立つ”ってさ。ここんとこずっと体鍛えてるよ。」
「体、壊さなきゃ良いが……。」
「負けず嫌いだからね……。」
煉叡が尻尾で少し布団を捲り、真梛羅の目元まで見えるようにする。
「煉叡?何をして「朴、滋……。渓、御……。」
「「真梛羅!」」
「具合はどうだ?」
「体が、重たい……。」
「そうか……。」
「ご飯持ってきたけど、食欲ある?」
「……うん。」
真梛羅はゆっくりとその場に座るも体を支えきれず、横に倒れていく。
煉叡が尻尾で真梛羅を支える。
「真梛羅。」
『朴滋、枕、退けてくれ。』
「あ、ああ……。」
朴滋は枕を退ける。
煉叡は真梛羅をベッドにくっ付けてある大きく高さのある本棚の壁と部屋の壁にもたれさせ、尻尾で真梛羅の左側を支える。
「ごめん、ね……。手間、掛けちゃって……。」
「真梛羅は悪くないわ。」
「ああ、その通りだ。それに大事な“妹”の為だからな。」
「いもう、と……?」
「ああ。」
「私達は‟兄妹”としての存在として互いを見てるの。」
「一番上の姉が舞姫。長男が夏雅璃弥。次女が渓御。次男が孔醒。三男が麗菜。四女が櫂麻。そして、末っ子が真梛羅。」
「!」
「歳順よ。舞姫は26。夏雅璃弥が18。私が17。後の皆16。16の人はここに来た順よ。」
兄妹……。
「だから遠慮しなくて良いし、もっと甘えて良いよ?」
「ああ(笑)」
「……アハハ。お姉ちゃんやお兄ちゃん……いっぱいだね……。」
「どうした?」
「……私に関わった人は皆、直ぐに居なくなっちゃう……。」
「「「!」」」
「……お爺ちゃん、お父さん、お母さん……。そして、百鬼も……。」
「ご、ごめん……ね。辛い事、思い出させちゃった……。」
「ううん、大丈夫!今は皆が居るから……!」
「「……。」」
『俺は居なくなっていないぞ。』
「「「!」」」
『舞姫や、唔天もな。』
煉叡は真梛羅の頬を尻尾の先で撫でる。
「く、くすぐったいよ……。」
『笑うまで辞めないからな。』
「んっ……。」
真梛羅は涙が止まり、目を閉じながらゆっくりともがき続けるが自然と笑顔になっていく。
『さ~てと、眠くなる前に食事、済ましちまおうぜ。』
「思ったより一杯食べれたね。」
「だ、だって笑うのに体力、使っちゃったから……。」
『じゃあもうちょっとやるか。』
「い、嫌……。や、辞めて……。」
『気分転換になるだろう。』
「ううっ……くっ……。」
煉叡はゆっくりとくすぐるを辞め、頬を撫でる。
「い、嫌だよ……。まだ、寝たくない……。」
『大丈夫、起きたら誰も居ないなんて事には絶対ならない。』
「本当に……?」
「勿論だ。」
「約束、だよ……」
真梛羅はゆっくりと眠りに落ちていった。
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