第17話 孤独と恐怖

 1人で本を読んでいたが能力で屋敷内の声を聴いてみる。

 すると、5つの足音が聴こえ、真梛羅は本を本棚に戻して奥の部屋に閉じ籠る。

 あいつだ、あいつの……声だ……。

 書斎の向こうの舞姫の部屋から声が聴こえる。



『へ~……思ったより普通ですわね。これは?』


 瑠卸が何かを見つけ、触れば書斎の扉が開いてしまう。



 嫌、だ……。来ない、で……。

 真梛羅は後退りすればヒンヤリしていてサラサラした物に背中が当たる。

 真梛羅は携帯を震える両手で握り締め、目を閉じて声を殺しながら涙を流し始めればその何かは真梛羅を包み込む物の、恐怖で息が苦しくなる。

 室長、麗菜、夏雅璃弥、朴滋、孔醒、櫂麻、渓御、唔天、炎轟……。


『……真梛羅。』


 煉叡が真梛羅の耳元で小さく囁く。

 真梛羅は怯えながら目を開ける。そこには真梛羅を尻尾と体を優しく包み、顔を真梛羅の顔にくっ付けている煉叡が居た。


「煉、叡……。」

『大丈夫、俺が傍に居る。主には指一本触れさせない。』


 真梛羅は少しだけ息がし易くなり、目を閉じる。

 煉叡は真梛羅を優しく包みながら、扉を睨みながら、瑠卸が通り過ぎるのを待ち続けていればゆっくりと扉が開き始め、は扉が開くに連れて、真梛羅を少しずつ強く包んでいく。


「俺だ、煉叡。朴滋だ。」

『朴滋、か……。』


 煉叡は少しずつ力を抜けば煉叡の毛で隠れていた恐怖で怯えきった顔で目を閉じている真梛羅が姿を現す。


「真梛羅!」

『大丈夫、あいつには指一本触れさせはして居ないし、会っても居ない。ただ、怖かった。俺が居るのを忘れるくらいな。』

「……息が荒いな。」

『所で、奴はどうなったんだ?』

「もう屋敷の外だ、安心して良い。」

『……そうか。』

「あ、あれ……?朴、滋……?な、何でここに……?」

「真梛羅、大丈夫か!?」

『もうあいつは居ない、安心しろ。』

「うん、良かった。」

「真梛羅、立てるか?」


 真梛羅はゆっくりと立ち上がるが、バランスを崩して前に倒れ、朴滋が慌てて真梛羅を支える。


「だ、大丈夫か!?」

「あ、あれ……?力が、入、らない……。」


 煉叡が真梛羅の服を咥え、体を起こす。


『朴滋、体を支えてやれ。今の真梛羅は恐怖で力が入らない。』

「あ、ああ……。」


 朴滋が真梛羅の右腕を自分の肩に乗せて右手で支え、左腕を真梛羅の腰に置く。


「大丈夫か……?」

「うん、早く……皆の所に、行こう……?」

「……ああ。」




「真梛羅、朴滋、煉叡!」

「麗菜、孔醒、夏雅璃弥、櫂麻、渓御……。」

「「「「「真梛羅!!」」」」」

「何でこんなに体、熱いんすか……!?」

「大丈夫!?」

「ちょっと代わって。」


 渓御は畳の上に座って真梛羅をもたれさせる。

 真梛羅の頬は少し赤く、息は荒く、目を閉じていた。


「風邪、引いちゃったみたい……。これはちょっと長引くわ。」


 夏雅璃弥は真梛羅の額に触れる。


「俺でも熱い。相当高熱だ、39あるかないかだ。」

「ストレスっすかね……。」

「とりあえず寝かしてやろう。」


 渓御は真梛羅を布団の上に寝かし、厚みのある掛け布団を掛ける。

 櫂麻は真梛羅の手を優しく握り続ける。


「私は水竜だから少しは冷えるかな……。」

「よく頑張ったね、お疲れ様。後はゆっくり休んで。」

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