第16話 怯える目
「んっ……。」
「真梛羅!」
『……大丈夫か?』
「……煉叡、良かった……。来て、くれた……。」
『当然だ。』
煉叡は真梛羅の体を起こす。
「煉、叡……?」
『孔醒、って言ったな?後、頼む。』
煉叡は真梛羅の背中に入っていった。
「さぁ皆の所に行こうっす!」
「真梛羅ちゃん!」
「室長……。」
「大丈夫か!?」
「安心しろ、もうあいつ等は居ない。」
「大丈夫!?」
「怪我してない!?」
「ごめんね、私が居ながら……。」
「皆……。」
「ちょっと休んだらどうっすか?目が怯えてるっす。」
「そうね、とりあえず中に入りましょ。」
「……大丈夫か?」
「……うん。」
「何かしてほしい事、あるか?」
「1人に、しないで……。」
「勿論だ。」
「他に何かあるっすか?」
真梛羅は首を横に振る。
「何かあったら言ってほしいっす!出来る限りの事はするっすよ!」
「今日の予定、どうする?」
「真梛羅ちゃんはこんな状態だし……。」
「外出禁止だし……。」
ピンポーン……。
「俺が出てくる。」
「ごめんね。」
「大丈夫?」
真梛羅の目はまだ怯えている。
「そうだ!」
麗菜はポケットから携帯とイヤホンを取り出す。
「携帯とイヤホン……?」
「それで何すんすか?」
「良いから見てて、真梛羅♪はい、これ!」
「……?」
「右耳に着けて!」
麗菜は右耳用のイヤホンを渡し、携帯を弄り始める。
真梛羅は疑問に思いながら右耳に着ける。
「流すよ~♪」
「!」
「どう?」
「な、何でこれが好きって知ってるの!?」
「いつも自分の部屋で聞いたでしょ?」
「ああ~……。そういう事~。」
真梛羅は尻尾をリズミカルに動かし、嬉しそうに目を閉じる。
「何したの?」
「携帯で曲流してるの♪」
「そんな事で?女ってよく分かんねぇ―な。」
「♪」
「真梛羅、楽しそうだ。」
「そうっすね。」
襖が開き始めるのに比例して真梛羅は怯え、麗菜にイヤホンを返して舞姫の後ろに隠れる。
「唔天、炎轟。」
「よお、今日は大事な話をしに来た。この前、あいつに取引内容などを伝えられた。あいつ等は外国の者で、スパイとしてこの国に居るらしい。あいつ等はあの伝説の妖人、白泳の孫である真梛羅の力に興味があるらしい。しかも、敵国だ。そこで、“この国と今後一切戦争しない代わりに真梛羅を渡せ”と言われた。」
「「「「「なっ!?」」」」」
「ちょっと待って、私内容は聞いたけどそんな事言われてない!!」
「昨日、俺の所に来て言ったんだ。勿論、断った。確かに出来れば戦争はしたくない。だが、こんなに怯えてる子を渡す訳にはいかん。」
「当然だ。」
「そしたら次は“ここでの生活を覗かせてほしい”と言ってきた。どうしても真梛羅から手を引きたくないらしい。」
「なら、真梛羅を軍に隠せば良いっす。」
「「「「「!?」」」」」
「それも1つの案だな、確かに、軍にさえ預けてしまえば訪問者は本人の許可なしには会えないし、無理に入れば一瞬で蜂の巣だ。」
「それじゃ私達、いや、この組織の意味が「それじゃあまた真梛羅を誘拐されそうになる。」
「それでも「私はここに居たい。ここだけが私の家で、居場所だから……。皆の居ない、他の場所になんて行きたくない……。」
「なら屋敷の奥に隠せば良い。これだけ広いんだ、あまり使っていない部屋は無数にある。」
「そうっすね、真梛羅がそれを望むならそれで良いんじゃないっすか?そうだ、屋敷の“最奥部”はどうっすか?あそこは開け方が特別っすから幾ら魔女でも入れないっす!」
「煉叡が居るから大丈夫だろうがな。もし、真梛羅が寝てても攫われる可能性は極めて低い。」
「真梛羅ちゃん、着いてきて!」
舞姫は真梛羅の手を取り、走り出した。
そこは本の沢山ある書斎で、舞姫の部屋の奥にあった。
凄い……。
「確か、この奥の―――」
舞姫が一番奥の本棚の本を1冊抜き、奥にあるボタンを押せば本棚が横にスライドし、奥に広く小さな小窓がある廊下があった。
「この部屋に居て。この本棚は人が入るかボタンを押すかで閉まるから、そこはあまり気にしなくて良いわ。ここと奥の部屋の本は好きに読んで良いよ、後、これ。」
「携帯……?」
「真梛羅ちゃん、携帯持ってないんでしょ?それに皆のアドレスは入ってるから好きにメールして♪それじゃあ、またね。時々顔を出すわ。」
舞姫は真梛羅を書斎に残して扉を閉めた。
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