第13話 魔女

「「!?」

「お前、何―――」


 真梛羅が孔醒の右手を握る。


「真梛羅……?」

「元の姿に戻っちゃ駄目……。戻ったら襲ってくる……。」

「お前、何者だ。」

「私は瑠卸るしゃ。貴方達が知りたがっている、ブラッド・キャッスルの首謀者よ。」

「「!」」

「そんな奴が何しに来た。それに結界があったはずだ。」

「あんな結界、ただの紙ですわ。まぁ、銅仁達は入ってこれないみたいですけどね。1つ目の質問の答えですが、取引をしに参りましたの。」

「取引……?」

「と言っても、貴方達ではお相手になりませんの。首謀者同士での取引ですわ。宜しければ貴方達の“室長”と“巡査”、“元帥”を出しては頂けませんの?」

「それは「私が室長よ。」

「舞姫!」

「室長!」

「思ったよりお若いのね。」

「それはどうも。」

「舞姫、出て来ちゃ駄目!こいつ、魔女だよ!」

「「!」」

「へ~。貴女、見ただけで私の正体が分かるのね~。」


 瑠卸は真梛羅の後ろにワープし、真梛羅の左腕を掴み、引き寄せる。


「真梛羅!!」

「取引など放っておいて、このまま連れ去ってしまうおうかしら?」


 真梛羅は恐怖で体が動かず、声も出ない。


「な~んて事をした所で、何も面白くないわね。」


 瑠卸は手を離し、孔醒は真梛羅の手を引き、出口へ走る。


「大丈夫か!?」


 真梛羅はその場に座り込み、俯いたまま応答がない。


「真梛羅、大丈夫か!?」


 舞姫達の所に麗菜、夏雅璃弥、朴滋、櫂麻、渓御が駆け寄る。


「真梛羅!?」

「しっかりして!」

「お前がやったのか……!!」

「言い掛かりはよして下さいませんの?私はその子に“触れただけ”ですの。」

「触っただけでこんなんになるか!」

「私は本当に何もしてませんの。それにしても、面白い子ですわね。私を見ただけで正体が分かるとは……。と言う事は貴女、もしかして何か感じ取ったのですの?私が貴女に“触れている間”に。」

「!!」

「ビンゴ、とでも言うべきですの?」

「っ……!!」


 真梛羅は頭を抱え、身震いをする。


「真梛羅!」

「それで?私の要求、受け入れて頂けるのかしら?」

「話ぐらいは聞いてあげる。唔天巡査と炎轟えんごう元帥も呼んであげる。」

「それは良かった。」


 真梛羅は頭を抱えるのを辞め、立ち上がり、瑠卸から一番遠い麗菜の背後に回り、くっ付く。


「真梛羅……?」

「ぅぅ……。っ……。」

「大丈夫、私達が就いてるよ。」

「安心するっす。絶対守るっす。」

「とりあえず場所を変えましょう。朴滋、一緒に来て。……貴女も。」

「……了解。」

「それじゃあまたね、“真梛羅ちゃん”。」

「……大丈夫か?」

「安心して、あいつはもう真梛羅の目に見える所には居ないわ。」

「大丈夫、もう大丈夫っすよ。」

「孔醒……。龍涙、取って……。」

「わ、分かったっす。」

「真梛羅、ちょっとここ離れよっか。あいつの、瑠卸の匂いが嫌なんでしょ?」

「……うん。」




 真梛羅は龍涙を布団の傍に置き、髪と猫耳だけが出るようにして潜り込み、眠る。


「相当怖かったみたいっすね。」

「で、あいつは一体何者何だ?」

「銅仁、氷邪のボスっす。組織名はブラッド・キャッスル。そしてさっきの奴の名は瑠卸。魔女っす。」

「「「「「魔女!?」」」」」

「真梛羅が見抜いたんす。」

「そっか……。」

「確かにそれなら触られただけでも怖いな……」

「でもあいつ……。何感じ取ったって言ったよね……?」

「見て正体が分かったから、目的とかじゃないっすか?」

「違う……。」

「お、起きてたんだ。」

「あいつの体、おかしい……。」

「おかしい……?」

「あいつの体、く「真梛羅ちゃ~ん♪」

「「「「「!」」」」」

「お布団から出てきて下さいません?」

「っ……!!」


 真梛羅の姿と龍涙が消える。


「「「「「!?」」」」」

「あら……何処かに隠れてしまわれましたわ。」

「貴様が驚かすからだ。」

「それもそうですわね。」

「真梛羅、大丈夫。大丈夫だから出てきて。」


 部屋の一番奥に黄緑の風が発生し、真梛羅が現れる。


「へ~、風神の力って面白いですわね。」

「さて、瑠卸。お引き取り願おう。」

「勿論ですわ。と、その前に―――」


 瑠卸は真梛羅の直ぐ前にワープする。


「!!」

「「「「「真梛羅!!」」」」」

「真梛羅ちゃん。」


 瑠卸は真梛羅の頬を触る。

真梛羅は壁にもたれたまま、下を向き、力が抜け、龍涙を床に落とす。


「しばらく通わせてもらいますよ。仲良くしましょう?」

「そこまでだ。」

「その子から離れろ。」


 唔天が銃。もう2人の男は40代ぐらいの長身の男が剣先を瑠卸に向ける。


「唔天……。炎轟……。」


 瑠卸は真梛羅から手を離し、マントで自らの体を包む。

真梛羅はそのままの状態でズルズルともたれながら座り込む。


「唔天、お前は一緒に居てやれ。さぁ、早くその子から離れてここから立ち去れ。」

「ふっ、良くってよ。」


 瑠卸は炎轟に剣を突き付けられながら月光の間を後にする。


「「「「「真梛羅!!」」」」」

「大丈夫!?」

「……うん。」

「ちょ、ちょっと!」

「お風呂入ってくる………。早くしないと、匂い……付いちゃう……。」

「わ、私も行くわ。」

「あれ程大事に持っていた龍涙を忘れていく程、か……。」

「麗菜、あいつの部屋で真梛羅を寝かすつもりらしい。」

「って、事は龍涙を届けないといけないっすね。」

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