第5話 白泳

「あの白泳!?」

「半人研究の第一人者の!?」

「数々の戦争を無傷で勝利した……!?」

「1人で一千の半妖を倒したって言う……!?」

「数多の武器を生み出したって言う……!?」

「“1億年”生きたって言う……!?」

「あの人の孫が真梛羅!?」

「ああ。」

「お爺ちゃんとはどんな関係だったんですか?」

「白泳さんは俺の師匠だ。俺を立派な警察官にしてくれた。」

「へ~!」

「じゅ、巡査。私、そんな話聞いてません……。」

「聞かれなかったからな。」

「だ、だからってそんな大切な事を……💧」


 真梛羅は下を向く。


「真梛羅……?」

「唔天巡査。私の祖父は……白泳はどんな最期でしたか?」

「「「!!」」」

「な、何故だ……?」

「私の種族は長寿なんです。最低でも5億年は生きれる。なのに1億。そんなに短いのはおかしい。」

「……。」

「お、俺も気になる!そんなすげぇ人だ!笑顔で、色んな人に感謝されながら死んだんだろ?」

「……。」

「ち、違うの……?」

「……。」

「「「「「……?」」」」」

「俺の師匠、真梛羅の祖父……白泳は暗殺されたんだ。16年前の1998年7月5日の深夜2時に。」

「「「「「!!」」」」」

「んだよ、それ……。」

「真梛羅、君が産まれた時に大火事があったよな?そして、その火が山に燃え移り、大規模な山火事へと発展した。」

「……。」

「まさか、唔天。それ、どういう事!?‟貴方も“あの場に居たの!?」

「ああ、俺はあの時、生まれたばかりの真梛羅を預けられた。そして、守ってくれと。師匠に頼まれた。これと一緒にな。」


 唔天は長い紫の袋を取り出す。


妖槍ようそう龍涙りゅうるい。師匠の最後の作品だ。これを真梛羅が16になった時に渡すよう託された。今、これを君に返そう。この組織を作ったのも君のお爺さんの意思だ。」

「!」

「“己の目で世界を見よ。竜の如く人に優しく、時には強く。己の道を己の手で切り開け。一度決めた事は途中で諦めない。人に優しく、愛されよ。己や大切な者には嘘を吐くな。大切な物は命を懸けて守り抜け。”そういう思いで打った槍って言ってたな。所で舞姫。お前は何故あの場に居たんだ?」

「昔、あの人に命を助けてもらったの。で、“新たに生まれてくる命を、孫を妹のように可愛がり、育ててくれ”って。あの時、そう言ってたわ。だからあの人の……真梛羅の家に行ったの。でも、間に合わなかった。私が着いた頃には山が丸々燃えてたわ。」

「……そうか。」

「その山、何処ですか。」

「この山だ。そして、この屋敷の造りも全て一緒だ。」

「そう、ですか……。」

「ああ。」


 プルルルルル。唔天のズボンのポケット内の携帯が鳴る。


「ちょっと失礼。」

「……。」

「……。」


 渓御は真梛羅の背中に飛び付く。


「……こ、この後どうしよっか?あっ、お、お腹空いたね💦ご、ご飯食べよっか💦ね、ねぇ?孔醒?」

「そ、そうっすね。お、俺は久し振りにラーメン食いたいっすね~。ど、どうっすか?室長。」

「え、ええ。じゃ、じゃあ皆食べたい物何かある?きょ、今日は出前にしよっか?ま、真梛羅ちゃんは何が良い?」

「……ごめん、私……部屋に戻ってる。」

「……おい、誰だ。真梛羅の部屋の場所、教えた奴。」

「ごめん……。」

「……聞かれたんでしょ?なら、仕方ないよ。」

「……舞姫、邪魔したな。」

「?」


 唔天は舞姫に茶封筒を渡し、玄関に向かって歩いていく。

「今日、出前なんだろ?それ使っとけ。」

「ど、どうも。」

「あっ、それと。」

「「「「「?」」」」」

「チャーハン。あの子、小さい時……俺が世話してる時、好きだった。……じゃあな。」

「おおきに!」

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