第2話 見えぬ声

「寝ちゃった、わね。」

「まぁ……猫又入ってるから起きとくのは厳しかったんじゃない?今昼だし。」


 ピンポーン。


「行ってくるわ。後、宜しくね。」

「ん……。あれ、私……寝ちゃってた……?」

「ああ。」

「あれ、室長は……!!」

「真梛羅……?」



『今、真梛羅は居るか?』

『……何方様でしょう。』

『俺は百鬼びゃっき。真梛羅の兄だ。』



「嘘……。」

「お、おい!しっかりしろ!」

「ありえないよ……。どうして、生きてるの……?」

「真梛羅!」


 真梛羅は座ったまま狼狽え続け、夏雅璃弥が真梛羅の体を激しく揺する。

 廊下の足音が徐々に大きくなる。


「真梛羅ちゃん!」


 本部室の扉が大きく開くもそこに立っていたのは舞姫だけだった。


「真梛羅ちゃん!?」

「室長、真梛羅の様子がおかしいっす!!」


 舞姫は何も言わず真梛羅を抱き寄せる。


「……真梛羅ちゃん、落ち着いて。大丈夫。ここは安全だし、真梛羅ちゃんに害成す物も人も何もないわ。」

「室、長……?」

「どうしたの?何か怖い事でもあった?私に話してもらえない?」

「私の……私の兄、は……5年前に、山火事で死ん、だんです……。なのに、さっき……。室長、と……。」

「あの人で間違いないの?」

「……はい。」

「……そっか、それは怖い思いをしたね。でも、大丈夫。ここには幾つかのルールがあるの。その1つに“唔天ごてん巡査などと面識ある者以外、入れるべからず”って言うのがあるの。つまり、私と一度顔を合わせ、国に申請していない人物はこの屋敷に入れないようになってるの。だから、怯えなくて良いわ。さっきの人物が人か。妖かは分からないけど私やこの屋敷を守っている警察、軍、国がある限り真梛羅には手を出せないし、会う事もきっと出来ないわ。」

「それは……良かっ、た……」

「真梛羅ちゃん!!」

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