第2話「梓の1人反省会」

 珠子先輩との初デートから帰宅してすぐ、私はベッドに身を投げ出した。

 理由は簡単で、とても疲れたからだ。

「うう~~~! 失敗した~~~!」

 デートはもちろん、とても楽しかった。もっとも、私は珠子先輩といられるのなら、どこへ行っても楽しいのだけれど。

 問題は珠子先輩の方。私は前日まで必死に調べて、考えたデートプランをちっとも実行できなかった。

 まず待ち合わせの30分前には着いていようと思っていたのに、緊張して眠れなかったせいで寝坊して、珠子先輩を待たせてしまった。

 イルカショーの時も、濡れるリスクを考えておくべきだった。せっかく珠子先輩がオシャレして来てくれたのに。

 帰り際、珠子先輩は最終的には楽しんでくれたようなことを言っていたけど、きっと妹や女友達くらいのそれで、恋とは程遠い。

「もう~~~! 私のバカ! バカバカバカぁ!!」

 ベッドの上で、ぬいぐるみを抱えてジタバタしたところで、何も解決しない。

 けどひとしきりゴロゴロすると、次第に心が冷静さを取り戻していく。

おかげで今日良かったことも思い出せる。

(でも……手は繋げたんだよね……)

 薄暗い館内で、こっそり手を繋いだ。

珠子先輩の手は、真っ白でとても綺麗で、だけど思っていたよりずっと温かかった。

考えていたデートプランで、唯一実行できた。

それだけで、十分幸せだ。でもそれで満足してはいけない。

「よし! 次はもっと頑張る!」

 気を引き締めるため、パンと頬を叩いた。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る