当て馬女と百合の花 番外編

御園詩歌

第1話「梓ちゃんはモテる」

珠子先輩と付き合うことになり、初デートで水族館に行くことになった。

 今日も帰って早速、デートプランを考えなきゃいけない。

「お先に失礼します。お疲れ様でした~」

「あ、立花さん。ちょっといい?」

 帰ろうとしたところ、声をかけられた。

 確か同期で黒髪イケメンの斉藤くんだっただろうか。早く帰りたいのに、一体何の用だろう。

「あ、はい。いいですよ~」

 精一杯の愛想笑いで答える。

 斉藤くんは、頬を掻きながら言った。

「あのさ、今週の土曜って空いてる? 映画のチケットが2枚あるんだけど、誘った奴みんな空いてなくてさ、良かったら……」

「すみません。土曜日は空いてないです」

「あ、何か用事?」

 土曜日は記念すべき珠子先輩との初デートだ。

「はい。デートなんです」

私はにっこり笑って言った。斉藤くんは一瞬ぴしりと顔を凍りつかせたけど、すぐに申し訳なさそな表情になった。

「あー……うん。デート、楽しんで来て」

「はい。お気遣いいただいて、ありがとうございます。お疲れ様でした」

「お疲れ様……」


 きっと今頃、斉藤くんは「立花さん、彼氏いるんだ……」なんて思っているだろう。

斉藤くんには悪いけど、何曜日だろうと、これから2カ月、珠子先輩のため以外に空けておく時間は、私にはない。

先輩は『彼氏』じゃないけど、今一番大好きな人だから、絶対に振り向かせなくちゃいけないから。

斉藤くんが映画に行く土曜日は、一世一代の大勝負。

まずは水族館デートの方法をもっと調べないと。

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