第2話
陸地を歩き出してぼくは、自分がどこに行ったらいいか判らないことに気がついた。おじいちゃんとの二人暮らしだから、ぼくがいなくなったらおじいちゃんが心配する、ううん、心配だけじゃなくてもっと大変なさわぎになる。だから早く帰ったほうがいいって、そう思ったんだけど、でも、せっかく海を越えてきたんだから、もう少し世界を見てみるのも悪くない気がして、それでそこに留まった。
ぼくは膝を抱えて、少しの間、草が風になびく様子や雲が青い空をゆっくりと流れていくのを見つめていた。学校や友達のことも少しは頭をよぎったけれど、雄大な景色を目の当たりにしたらもうそれはどこか違う世界のことのように思えて、それで考えるのをやめてしまった。
そんなぼくに、声をかけてくれるものがあった。きりんだった。
きりんは言った。こんなところで何をしているの? この大草原の景色を見るんならもっと高い所からのほうがいいわ。私の首につかまってこの広い空と大地を見てごらんなさいよ。
そこでぼくはきりんとの旅を始めた。きりんの背中に乗ってみると、なるほど、彼女の言うとおりそこからの景色は素晴らしかった。広い広い草原の、その遮るもののない大地がずっと見渡せて、そう、地平線までずっと見渡せて、ぼくはそこでなぜかミーファたちと旅してきた海を思い出していた。草原の草の、ゆらゆらとなびく様子が海原に似ているせいなのかな。そう思うと地平線が水平線に見えてきて困った。
やがてぼくたちは砂漠の入り口についた。その先がどうなっているのかも判らない、大きな大きな砂漠だった。けれどその砂漠の始まりはきりんとの旅の終わりも意味していた。きりんは自分は砂漠に入れないと寂しそうな顔をし、もしこの先を行くのなら私たちはここでお別れをすることになると言った。
ぼくは、ばくも迷ったけれど、やっぱりこの先を行くと言った。それが正しいかどうかは判らなかったけれど、この先にあるものを見てみたいと思ったんだ。
きりんはぼくに、体に気をつけるのよと言って去っていった。ぼくはしばらく、きりんの後ろ姿を見送ってから砂漠を歩き始めた。
すると、ぼくの後ろから、ちょっとお待ちなさいと、ぼくを引き留める声がした。振り向くと、そこにはらくだがいた。
らくだはぼくに、砂漠のことを知っているのかと聞いた。ぼくは
なら、私が一緒に行ってあげる。私の背中にお乗りなさいとらくだは言ってくれた。
らくだの言葉はありがたかった。ぼくは一も二もなく頷いてらくだに促されるままその背中の二つのこぶの間にまたがった。そこはきりんの背中よりは少し低かったけれど砂漠の様子がよく見渡せて、とても眩しかった。陽の光に照らされた一面の砂はじつは金や宝石でできているんじゃないのかって、そう思った。
ぼくがそのことを伝えるとらくだは笑って、そうよと言った。そうよ、ここにあるものはね、全てが宝物。でも、金や宝石よりももっと尊いものかも知れない。そして宝物はね、今、ここに見えているものだけじゃないの。後で、それが見えるようになったら教えてあげる。
ぼくはらくだのなぞなぞの答えが待ち遠しかった。
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