第4話 私が記憶を無くした理由
「あの…そろそろ教えてもらってもいいでしょうか?」
私、天野川あずきは今、お城にいます。なぜこんな所いるのか?私でもあんまり分からない。
「ああ、いいけどその前に敬語やめてくれない?いくら俺の記憶が無かったとしても姉さんに敬語されるのは調子狂うっていうか…。」
急なお願い…。いいのかな?王子様相手にタメ口なんて。…でもイケメン顔で言われると断れない…。
「…分かった。けどホントにいいの?次期王様に向かってそんな。」
「いいんだよ。てか姉さんなんか勘違いしてない?うちの国は代々女性が継いでるから敬語使わなきゃならないんのはむしろ俺だけど?」
女性が継ぐってことは…え!?…もう訳分かんない。
「じゃあまず、この国の現状についてから。この国の女王は今、病に伏せている。病っていうより一種の呪い、とでも言った方がいいか。この呪いは、魔王から受けたものだ。俺らの国、アナタシアは神界の中にある国だ。と言っても神界の中にある魔法界って言ったほうが正しいんだけど…。そこんとこはまた学んでもらうから軽く流しておくな。それで神界と敵対しているのが魔界。魔界は神界の土地を狙っている。そのせいで戦争になった。」
土地争いで戦争…どこも変わらないんだなあ。今さらっと重要なことを言われた気がするんだけど気のせい?
「その時受けた呪いだ。その呪いのせいで女王は倒れた。もってあと半年。だから、次期女王が必要なんだ。普通なら女王の娘である姉さんが継ぐんだけど…。9年前、姉さんが消えた。誘拐されたんだ。」
9年前?それって…。…私の1番古い記憶は9年前、6歳の頃だ。なんで記憶がないんだろうってずっと思ってた。ショックでとか、かな?
「当時、アナタシア国は人間界と交流があったんだ。その時来た1人の男が金目当てで城に忍び込んだ。俺と姉さんはその時かくれんぼをしていた。今でも思うよ。あのとき俺がかくれんぼしようなんて言わなきゃよかったって。姉さんは宝物庫に隠れていたんだ。そして、宝物庫から宝を盗み出そうとしていた男に見つかって捕まった。まさか城に盗みに入られると思っていなかったらしくて、外の警備は厳重でも中はあまり警戒していなかったせいでもあるようだが…。その男、もちろん金目的で…身代金でも取ろうと思ったらしい。父さんたちにお金を要求してた。まあ結局その男は捕まったけど。だけど、捕まえた場所が悪かったんだ。当時あった人間界とこの国を繋ぐ穴の前だった。そのせいで、捕まえる拍子に落ちた。」
何となくだけど分かった。私の記憶が無くなったのはその時の事件が原因なんだ。
「あれ?じゃあ何で私はそのまま人間界にいることになったの?そのままほったらかしたとか?」
「いや、探しに行った。もちろん俺も。でも、いくら探しても、何度探しても見つからなかった。そして姉さんは死んだ、と判断されてしまった。その後人間界との繋がりを絶った。そして女王が倒れた今、次期女王を決めようって話になって、候補を集め始めようとしてたんだけど…。そんな時姉さんが現れたんだ。…記憶を無くしてたけど。」
何だかおとぎ話みたいに複雑。
「他に気になること、ある?」
「あ、そうだ。ねえ私とあなたって双子なの?そうじゃなきゃ同い年なんてあり得なくない?しかも顔似てるし…。」
「ああ。そこんとこ、ちゃんと話して無かったな。正確には俺は女王とは血が繋がってない。俺は養子だ。隣国の王子なんだ。俺の国は魔王に滅ぼされた。俺が生まれてすぐにな。家族が居なくなった俺は、ここに引き取られたんだけど…。顔は、もとから親同士が親戚だからその影響だろ…って、あれ?俺、姉さんに年齢言ったっけ?言ってない気がするんだけど。」
「えっ…?」
…確かにそうだ。ルミナスは自分の名前とこの国の王子ってことと、私の弟だということしか話してない。
「あれ?なんで私知ってるんだろう…我ながら不思議…。」
「もしかして姉さん、記憶は全て消えているわけじゃない?」
そうだったらわたしも嬉しいんだけどなあ…。覚えてないのがつらい。
「まあとりあえずそのことは一旦置いといて…今から、これからのことについて説明していくぞ。まぁ主に教育に関してなんだけど。」
「…教育ってなんの?」
なんだか嫌な予感…。
「そりゃあ…プリンセスになるための、かな。厳しくするつもりだからって教育係が言ってたぞ。…頑張れ。」
複雑そうな顔でルミナスが言った。
私一体…どうなるの?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます