第7話 肉を片面しか焼かない理由


 奴隷少女を連れて街を歩いていると一人の老婆を見かける。その老婆は肉を棒に刺して焼いているのだが、不思議なことに肉は片面は丸焦げで真っ黒になっていて、その反対側は生焼けであった。しばらく老婆の様子を観察してみても、肉をひっくり返したり、位置を変えるなどの素振りは全く見せない。


ナローシュ「お婆さんすみません、どうしてお肉を片面しか焼いていないのでしょう。ひっくり返して両面焼いた方が美味しいと思いますけど」


老婆「そうだねえ、理由を教えてあげるからちょっとそこにお座りなさい」


 老婆は優しく微笑むので、ナローシュ達は戸惑いながらも座り込んだ。


老婆「それでは何から話そうかねえ……」


 その後、老婆は肉を片面だけ焼く理由には触れずに、世間話が延々と続く。いつの間にか、お肉からは黒い煙がプスプスと立ち上がっていた。


ナローシュ「あの、すみません、そろそろ理由を教えて欲しいのですが」


老婆「おやまあ、もうこんな時間かい。楽しいと時間はあっという間に過ぎてしまうものだね。それじゃあ、気になる理由を教えあげようじゃないか」


 老婆はニヤリと笑う。


老婆「貴方みたいな親切な人と世間話をしたかったからだよ」



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