第8話 王都に転移拠点を作りました

 王都5日目9時、父と姉は、騎士学園に行くことになった。

俺も、同行するはずだったが、昨日の夜、思いついたことがあって予定変更だ。

今日も、アニーの薬屋へゆく。

この距離なら、転移魔法が使えるのだが、歩いて行いった。

9時開店らしいが、父の話によると、アニーは、しょっちゅう朝寝坊助らしい。

9時半に開店していないこともあったという。

なので、ゆっくり歩いていった。


 店に到着、ドアのカギは掛かっていない。

「こんにちは」

店に入ると眠そうな顔のアニーがいた。

「あら、坊や。今日は何の用」

「アニーさんにお願いがあって来ました」

「また、何かの錬金」

「いえ、そうじゃなくて、空間探知の魔方陣をこの店のどこかに描かせてほしいんです」「空間探知の魔方陣?」

「正確には転移魔法の拠点づくりです」

「て、転移魔法ですって!あんたそんな魔法まで使えるの?いったい何者?」

「普通の子供ですが」

「普通ってね~。普通じゃないわよ」

「....」

「まぁ、いいわ。でもどうしてここを拠点にしたいの?」

「また、錬金器を借りしたいことがあるかな~と」

「なるほどねぇ。でもねぇ~」

「アニーさんの手伝いもできますが。アイテムボックスって高いんでしょう」

「ふむ、おいしいかも。...2階の書庫かな。ついてきて」


 2階に上がると廊下があり、向かって右側に2部屋、左に1部屋あった。

左側の部屋が書庫だった。

中に入ってすぐの場所に、机が1卓と椅子が2脚置かれていた。

窓のない所の壁際は、すべて本棚。

それ以外にも、部屋の奥に背中合わせにして、2対の本棚がおいてあった。

小さな図書館なみである。

「凄いですね!」

「ふふ、驚いた。」

「驚きました。この本、読みに来てもいいですか?」

「いいわよ。魔方陣の場所は、そうねぇ」

といって部屋を見回した。

「一番奥の窓際でどう?」

「いいですね。じゃあ早速」


 空間収納から、魔法のインクを取り出し魔方陣を描き始める。

アニーが見守るなか、慎重に描いていって完成させた。

「ふう~、完成です」

「きれいな術式ね!魔方陣の描き方は、誰に習ったの?」

「本で習得しました」

前世でだけどな。

「そう、その年でねぇ」

じと目で見られた。


 インクが乾くのを待って、実験をすることになった。

アニーをここに残し、俺は、1階へ降りていった。

まず、空間認識の魔法を使う。

この距離ならスキルでも可能なのだがな。

よし、何もないことが確認できた。

転移魔法を使った。

もちろん、成功だ。

「どうやら、成功したようね」

「はい、おかげさまで」

「もう一度訊くけど、あんた、何者?」

「ただの子供ですが」

「そうね、見た目はね」


 「ところで、ここへ来てもいい時間ですが、午前9時から午後5時でいいですか?」

「そうねぇ。朝は10時からだね。9時だと寝てるかも」

「他に何か気をつけることは?」

「確認だけど、この魔方陣を使えるのは、坊やだけなのよね?」

「う~ん。僕だけのはずだけど。魔道具を作れば使えるかも」

「へぇ~、そうなんだ」

「作りましょうか?」

「私が使えるってこと?」

「そうです」

「じゃあ、お願いしようかな」


 1階の作業場へ行って、必要な材料を探すが、見つからなかった。

次に来るときまでに材料を揃えておくことになり、その日は帰った。

父と姉は、すでに宿舎に帰ってきていた。

昼食後、父と軽く剣の手合わせをして、その日は終了。

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