第7話 王都の生産街へ行きました

 王都4日目。

兄さんの装備やお土産など、買い物をすることになった。

最初に向かったのが、生産街の鍛冶屋だった。

父さんの旧知のドワーフがそこの主人らしい。

店はレンガ造りの2階建で結構大きかった。

中に入るとこじんまりとした店舗で、色々な武器が並べられている。

作業場は、奥にあるらしく槌の音が聞こえてくる。


 店番だろうドワーフの女性に父さんが、近づいていった。

「やあ、ナーラ元気かい」

「ありゃ~、マクレスじゃないかい」

「ガットムに会いたいんだが、奥に行ってもいいかい?」

「ああ、旦那も喜ぶだろうさ」

「ところでその子供達は、あんたの子かい?」

「ああ、紹介しておくよ」

といって紹介が済んだ後、僕たちは奥の作業場へ向かった。


 作業場は、炉の熱気でかなり暑く、そこで5人どドワーフが作業していた。

父さんは、1人のドワーフに近づいていって話しかけた。

「やあ、ガットム」

「ん、マクレスか!ちょっと待ってろ」

少しだけ槌を降り続けてから、叩いていた金属を水につけた。

その後

「よし。待たせたな」

といって俺たちの方を見てにっこり笑った。

「ところでマクレス、王都には何の用だい?」

「息子が、騎士学園に入るので付き添いさ」

「へぇ~、後ろに居るのがそうかい?」

「ああ、一番背が高いのがそうだ。こいつに剣を打って貰おうと思ってな」

「ふむ」

ガットムさんは、兄をしばらく観察するように見た後、

「ついてきな」

と言って、店の方へと向かった。


 店に着くと、兄さんに1本の剣を渡し、素振りするよう促した。

しばらく兄さんの素振りを見ていたガットムさんは、兄に尋ねた。

「もう少し重い方がいいかい?」

「はい、もう少しだけ重い方が」

「分かった。ちょうどいいのを作ってやるよ」

と言ってから、父との相談を始めた。

「最初から高い材料は、要らないだろう」

「そうだな、体ももっと大きくなるだろうしな」

「じゃあ、鋼でいいな」

「ああ、それでいい」


 ほかに、既成の剣を1本、僕に買ってくれることになった。

ガットムさんが選んでくれた剣を振ってみると、とてもしっくりきた。

「ところでガットムさん、兄さんは両手剣が得意で、僕は片手剣が得意だと、どうして分かったのですか?」

「ふむ、腕の筋肉の付き方を見れば分かるんじゃよ」

「なるほど」

長年の経験で分かるのだろうな。

父さんが、剣2本分の支払いを終えた後、僕たちは店を出た。

兄さんの剣は、10日後には出来るらしい。


 次に向かったのは、すぐ近くの皮製品を作る工房だった。

工房に入ると、皮鎧や革製の盾、鞄、色々な物が、所狭しと並べられていた。

ドワーフの男性が作業中の手を止めて、僕たちの方へ近づいてきた。

やはり父さんの知り合いらしく、いつもの挨拶、僕たちの紹介を終えた。

兄さんの皮鎧を見繕って、店を出ようとしたとき、ある鞄が目にとまった。

「父さん、この鞄を買って」

閃いたのだ!そう、あることを閃いたのだ。

父さんは、不思議そうな顔をしていたが、何も言わず買ってくれた。


 次は、次は商店街へお土産を買いにゆく予定だった。

その前にやっておきたいことがある。

「父さん、この近くに魔道具を作ってる店はない?」

「ん~、魔道具か?」

「あぁ、そういえば薬屋アニーの店には、魔道具も置いてあったな」

「連れてって」

「行ってもいいが、いったい何が欲しいんだ?」

「へへ、秘密」

「ふ~ん、秘密ね。まあいいか」

と言って、アニーの店へ連れて行ってくれた。


 アニーの店に入ると、エルフの女性が1人店番をしていた。

緑の長髪、緑の目、長い耳に整った顔立ち、誰が見てもエルフだろう。

店内を見回すとポーションなどの薬とは別に、いくつかの魔道具が置いてあった。

(よし、付与錬金で作ったものだ)

いつものように挨拶と紹介を終えた後、父さんに言った。

「父さん、僕、ここでやりたいことがあるから、買い物は、父さんたちだけで行って」

「ふむ、まあシルトのやることは、俺には分からん。金は必要か?」

「たぶん、僕の小遣いで足りると思う。足らなければお願い」

「分かった。アニー、何だか分からんが宜しくたのむ」

と言い残して、店を出て行った。


 父さん達が出て行くのを確認してから、アニーさんに尋ねた。

「アニーさん、錬金器を貸して欲しいんだけど」

「へぇ~、坊やは、錬金魔法が使えるのかい?」

「うん、少しはね」

「何を作るつもりだい?」

「アイテムボックス」

というと驚いたような顔をして、じっとこちらを見てから言った。

「ついておいで」


 奥の作業室に行くと、薬の材料などがきれいに棚に整理されて置かれていた。

真ん中には作業台があり、秤やガラスの容器、そして目的の錬金器もある。

錬金器は、箱形で前面はガラス、上部に水晶がはめ込まれている。

その水晶が魔力の受け口だと説明された。

「坊や、必要な材料はあるかい?」

「材料は、揃ってるよ」

そう言って、空間収納から、買ったばかりの鞄とハイゴブリンの魔石を取り出した。


 「収納魔法!当然だよね。アイテムボックスを作るんだからね」

アニーさんは、ごくりと唾を飲み込んでから言った。

収納魔法と思ったのだろう。

僕のは、魔力を使用しない空間収納スキルだったのだが。

まあ、錬金に必要なのは、収納魔法だけどね。


 まず、魔石を錬金器に入れ、収納魔法を付与する。

錬金器を使わなくてもできるのだが、この方が安定するのだ。

次に鞄と魔石を入れて、合成錬金魔法を慎重に使った。

錬金器の中が白く光った後、鞄だけが残った。

鞄を取り出して、効果を確かめる。

2メートル四方ほどの収納スペースを確認した。

「成功したようだね」

アニーさんは、感心した様子で何度も頷いている。


 「アニーさん、錬金器の使用料を払うよ」

「んっ。いいよそんなものは。それより他に何か作ってみないかい?」

「他の物か?アニーさん、何か欲しいものはある?」

「そうねぇ。鑑定器があったら便利かな」

「鑑定器?」

「よく似た薬草とか、間違いそうになるときがあるのよね」

「ふ~ん。作れそうかも。たぶん」

僕は、室内を物色して水晶の玉を1個見つけ出した。

「これ使っていい?」

「ああ、いいよ」

「他に魔石。中ぐらいの大きさのあるかな」

アニーさんは、「魔石中」と書かれた引き出しを開けて、僕に見せた。

「いいのがあったら使っとくれ」

その中から、丁度良さそうなのを一つ選び出して材料は、揃った。


 その時、彼(魔王)から待ったがかかった。

(俺にやらせろ)

(大丈夫かぁ?)

(俺様に不可能はない)

(まぁいいか)

手順は、アイテムボックスと同じだ。

まず魔石を錬金器に入れ、鑑定魔法(物)Cを付与した。

(ここまでは、問題ないな)

その魔石と水晶の玉と収納から取り出した少量の粘土を入れる。

(あれ、粘土って、必要?)

錬金魔法を使った。

(あれっ違う、ゴーレム錬金だ!)

錬金器の中が白く光った後、頭が水晶玉の小さなゴーレムが出来ていた。

(いいのかぁ~、これで)

錬金器を開けると、そのゴーレムがでてきた。

「マスター、何を鑑定しますか?」

「これよりおまえのマスターは、アニーさんだ」

「了解。マスターが変更されました」


 どん引きしているアニーさんに彼がいう。

「命令をどうぞ」

「あっ、う、うん、そうね」

棚から乾燥した薬草1本取り出して、ゴーレムに示す。

「これを鑑定して」

「癒やし草23グラム、品質は中です」

まあ、鑑定はできるみたいだけど...。

「こ、これを貰ってもいいの?」

「うん、その為に作ったのだからね」

「あ、ありがとうね」

引かれながらも、感謝されたようだ。


 その後店に戻り、2人でお茶を飲んでいると、父さん達が迎えにきた。

宿舎に帰り、その日は終了。

とても有意義な一日だったな。

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