第5話 王都へ行きました
兄さん12歳の春、王都マルガートの騎士学園へ入学することになった。
12歳になると、武術や魔法に優れた素質を持つ者は、すべて王立騎士学園に入学する。その費用は、すべて領主が負担する。
それが、この領地の伝統だそうだ。
試験もあるらしいが、この領地から行く者は、ほぼ受かるらしい。
事前に領地内で厳しい審査が行われるので、当然かも知れない。
兄さんが王都へ行くついでに、僕と姉さんも王都見学につれていってもらうことになった。
父さんが、入学生達の護衛隊長を務めることになった役得だ。
出発日朝、一行は南門に集合した。
兄さんを含め7人の受験生、魔法科2名、騎士科5名という内訳だ。
護衛は、父さんを含め5名、それに僕と姉を加えて総勢14名。
まずは、3台の馬車でガルカロス城塞都市へ向かう。
1時間ほどで領主の屋敷前にある訓練場に到着した。
少し遅れて、西街の一行も到着する。
城塞都市の人数を合わせると、受験生は、合計28名、護衛等を合わせると50名を超える大人数だった。
領主の激励の後、いよいよ王都へと出発した。
王都へは、3日かかった。
道中小さな村は有ったが、これだけの人数が泊まれるような施設などなく、野営だった。弱いモンスターなども見掛けたが、襲ってはこなかった。
たき火の準備などの仕事は、子供達も手伝った。
夜の見張りは、兵士達が交代でしていたようだ。
はじめての経験で、なぜかワクワクしたのを憶えている。
王都での宿泊先はというと、受験生は学生寮、その他の者は領主の別邸だった。
卒業生が出て行った後なので、学生寮は空いているのだ。
別邸の本宅には、領主の側室2人と三男および下の2人の娘が住んでいるらしい。
本宅には、そのほか執事とメイド達が住んでいる。
本宅を囲むように兵舎があり、そこが僕たちの宿泊先だった。
試験は5日後、それまでは父さんと都見物をすることなった。
王城は、王都の北側中央に位置し、北東に貴族などの高級住宅街、北西には兵士達の宿舎がならぶ。
騎士学校は、北西の兵舎街に在った。
南中心部に商店街、南東には鍛治屋などの生産街、南西は庶民の住宅街となっている。
南側は、完全に区分されている訳ではないようだ。
到着の翌日、父さんと姉さんと共に商店街へと向かった。
その途中、城の前の広場を通ったのだが、その真ん中に5体の石像があるのを見つけた。父さんにその像のことを尋ねると、勇者レオナルドとそのパーティーの像だというではないか。
全然似てない!
誰1人として似てない。
彼(魔王)に「(おまえあんなにイケメンだったか?)」と茶化された。
少し腹立つ。
その日は、商店街を半分ほど見て回って宿舎に帰った。
この国に異種族への偏見は、ほとんどない。
獣人であれエルフであれ力があれば重んじられる。
なぜなら、北の脅威(魔人や樹海のモンスター)に対抗するためだ。
なので、商店街では様々な種族が行き交っていた。
田舎では見たこともない種族も多かった。
種族もそうだが、店や品物も田舎にはない物が、沢山あった。
そのためか姉さんは、かなりはしゃいでいた。
僕は、前世の記憶があるのでそれほどでもなかった。
もちろん、子供として不自然にならないように、少しははしゃいでおいたが。
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