第3話 領主の視察です

 初めての訓練から、3ヶ月、突然領主が訓練の視察にきた。

領主の名はギルバート・ガルカロス、爵位は辺境伯だ。


 僕が勇者として魔王と戦っていたころ、魔王軍と戦って活躍したのが、英雄オルトガムの率いる義勇軍。

その英雄が、戦争終結後この国の初代国王となったらしい。

オルトガムの片腕として、活躍していた男の名がたしかガルカロスだったはずだ。

きっとその子孫なのだろう。

ガルカロスも勇猛果敢で立派な体格だったが、現領主もなかなかのものだ。


 まず、兵士達の剣や槍などの訓練の視察から始まった。

その後で、素質ある子供達の訓練も、行った。

兄さんの剣は、かなりのもので、同年代ではずば抜けているようだ。

ときどき僕も、兄さんと手合わせをするが、体格差があるため歯が立たない。


 領主と共に視察に来た者のなかに女魔法使いがいた。

名をギミーナ・ヨーゲルンという。

王都の魔法学院で母さんと同学年だったらしい。

その為か、武術の訓練だけでなく、子供達の魔法訓練まで視察することになったようだ。

 歳が上の子供から順に名前を呼ばれ、得意な魔法を使って行く。

兄さんは、強化系の魔法が少し使える程度なので参加しなかった。

姉さんの魔法は、あの歳にしてはかなりのものだと思う。

雷系の中級魔法を使うとギミーナさんは、かなり驚いていた。


 やがて、僕の番が回ってきた。

威力を最小限に絞って、ファイヤーボールを無詠唱で撃った。

だが、僕のファイヤーボールは、一般のファイヤーボールと少し違う。

普通のファイヤーボールは、スイカほどの大きさの火の玉が、見えるぐらいの早さで飛ぶ。

僕のファイヤーボールはかなり小さい火の玉が、目に見えないほどの早さで飛ぶ。

結果、的を貫いて小さな穴を開けるのだった。

時空魔法クイックを同時に発動して、ファイヤーに付与するとこうなる。



 驚いたギミーナさんが、やってきて、僕に質問した。

「ぼうや、今の魔法は何?」

「ファイヤーボールだよ」

「えっ?」

「威力を加減しないで普通の大きさにすると的が消滅するからね」

「!!!」

そんなギミーナさんを母さんがにやにやしながら見ていた。

後で「自分の子だ」と言ったら、もっと驚いたそうだ。

さらに「ほとんどの属性魔法が使えるし、詠唱したのを見たことがない」といったが、信じてもらえなかったようだ。

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