第49話 大学入学資格検定便覧 1
興味深い書籍のレビューをご紹介しよう。
これから2回に分けてご紹介する書籍は「大学入学資格検定便覧」という、かつて日本加除出版という出版社が出版していた、大検の受検案内とともに1年分の過去問を掲載し、同時に、勤労学生のための情報を提供していたガイドブックである。
私が大検こと大学入学資格検定を受検したのは1986(昭和61)年とその翌1987(昭和62)年で、購入したのは昭和61年版と同62年版であるが、引っ越しなどのうちに処分したのか、今は手元にはない。
昭和61年版はオレンジ色の拍子だった。ブックカバーもない、それこそ、司法試験の論文試験で受験生に貸与されている司法試験用受験六法に近いような(一度だけ、論文試験を受験した受験生の人に見せてもらったことがある。販売されているほうは、合皮のそれなりに見栄えのする表紙であった)、そっけない表紙である。
この「便覧」、現在アマゾンでは、数千円もしくは1万円以上の価格がついていて、しかも、各年度揃っているわけでもない。
2018年8月6日現在で、昭和56年、同58年、同59年及び平成2年のもののみが中古で紹介されているだけ。同日付のヤフオクサイトに至っては、出品者はいない。岡山県立図書館の検索サイトを確認すると、平成2年のもののみが蔵書として登録されている。これはちょうど、アマゾンで紹介されている最新のものと同一である。本書だけがこの図書館に残されているということは、これ以降の年度においては出版が停止された可能性もうかがえる。
正確にその状況を追い切れたわけではないが、この便覧がひっそりと消えていったこの頃から、大検関係の書籍は漸増し始め、過去数年間分の「過去問集」も出版されるようになったことは確かである。
さてこの蔵書たる「便覧」であるが、以前は「禁帯出」のシールが貼られていた形跡があるが、現在では書庫に保存されているものの、貸出可能である。その後のこの「便覧」の発行状況を正確に追いきれたわけではないが、この頃より、他の出版社が相次いで大検の過去問を出版し始めたことと、「勤労学生のための情報」などもはや必要とされなくなったこともあってか、少なくともこれより数十年来、この便覧は発行されていない。
今時の10代後半の大学を目指す青年たちには、「勤労学生」などという言葉など、もはや「死語」以外の何物でもなく、そんな情報には何の用事もないだろう。そんな情報よりもアルバイト情報が掲載されたフリーペーパーのほうが、まだ役にも立とうもの。
とはいえ、この便覧を改めて読んでみれば、昭和期の「勤労学生のための学びの場」の姿が浮かび上がるかのようである。この「便覧」には、過年度版同様、サブタイトルもつけられている。
その名もズバリ、「~勤労青少年のための勉学の手引き~」。
だが、アマゾンの商品紹介欄には、この平成2年度版については、その記述がない。もちろん実物にはその記述が表表紙をめくった先にみられるのだが、この年のものだけその記述がないというのも、あくまでも出品者の「書き忘れ」ではあろうが、この大検という制度がこの時期大きく変貌を遂げつつあり、すでにそのようなサブタイトルで語れない段階に入ってしまったことの象徴のように思われてならない
上記情報は、2018年8月6日現在。
現在アマゾンのサイトでどう記述されているかは、各自検索されたい。
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