第4章 高校を「降りた」先 2 広域型の通信制高校に集う若者

第35話 不登校の学習支援から

 本章では、私が家庭教師としてかかわった生徒の例を述べさせていただく。

 私がこれより述べる4人はいずれも、高校に一度は入学したものの、転学もしくは退学後の再入学という形で、「広域型の通信制」に来た生徒たちである。

 だが最近では、少し様子が変わってきた。

 前にも述べた通り、この種の「学校」は中退者だけでなく、中学生で不登校になった生徒や、全日制高校になじめない生徒たちの「進学先」としての役割も晴らし始めている。

 今後、その動きが止まることはないだろう。



 2018年7月下旬のある日。

 約5年ぶりに、高丸慎太君から電話がかかってきた。中断していた約1年間を除き、私が足掛け4年、家庭教師指導のために通っていた先の生徒であった。

 彼の家は、岡山県南部のある駅前のマンションである。父親は医師、母親は薬剤師で、それぞれ県南と県北の県立の名門普通科高校の卒業生である。父は国立大学の医学部、母は同じく薬学部の出身。彼にはほかに、妹がいる。彼は中学時代、あることがきっかけで「不登校」になり、そのため、母の実家のある津山市に本社事務所を構え、主として岡山県内全域を対象としている家庭教師業者である備作教育研究所(以下「備作教研(仮名)」に学習指導を依頼し、そこに、私が通うことになったという次第。

 中3の5月ごろから1年、まずは、学校の勉強の遅れを取り戻すべく、基礎からの勉強のし直し。

 

 実際、不登校生のための学習支援というのが、それより十数年ほど前から不登校問題の重要なテーマとなっていた。


 そもそも、学校に行けないにしても、勉強はしていかなければいけない。

 ただそれは、自宅でも、どこでも、できないわけではない。


 彼の自宅に私は通い、中学内容の基礎固めから、国語、数学、英語の主要3教科の入試対策までを担当した。かくして彼は、ある私立高校に合格し、入学した。

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