第32話 勉強に、身が入らず・・・
これまで主として大検や通信制高校などを利用して大学などに進学して人生を切り開いた人たちを紹介してきたが、すべての人がこれで成功していったわけではない。なかには、失敗した事例も少なからずある。あるいは、成功とか失敗という次元以前の問題として、自らの才能を生かしきれずドロップアウトしていった人もいる。
そういう事例を、2例ほど述べてみたい。
四国のある県に住む赤月彗星君は、高校入学後学校でトラブルを起こし、1年時修了をもって中退した。
心配した両親が、玉野市の真鍋氏宅に連絡し、相談に来た。今からなら、大検と通信制高校の併用で2年後には大学や専門学校の受験資格も得られるし、通信制高校を継続すれば高卒資格も得られると言った。彼は地元を離れ、玉野市の真鍋氏宅の近くの家を借りてそこで勉強しつつ、真鍋氏宅に通って授業を受けることとなった。
ところが彼は、なかなか勉強に身が入らなかった。
地元から出てきた「解放感」のようなものもあったのだろうか、生活リズムも乱れ、岡山市や高松市に遊びに行くこともしばしばあった。
真鍋氏宅での授業も、出たり出なかったり。
数か月続いたある日、真鍋氏は赤月君の住む家を訪れた。
彼は遊んで帰ってきて寝ており、ちょうど、起きた頃だった。
真鍋氏は今も悔いているが、つい、彼を怒鳴ってしまった。
「お前は一体、何をやっているんだ!」
「うるせえ! ぶっ殺してやる!」
売り言葉に買い言葉。このままでは泥仕合になると思った真鍋氏は、そっと彼の住む家を立ち去り、自宅に戻った。
しばらくして、赤月君が真鍋氏宅にやってきた。何やら武器か、そうでなくても武器にでもなりそうなものでも持っているのかと思いきや、そうではなかった。
「先生、もうしわけ、ありませんでした・・・」
力なく彼は、真鍋氏にわびた。そして、自宅へと戻っていった。
両親とも相談のうえ、これ以上迷惑はかけられないということで、彼は数日後、実家へと戻っていった。
その後彼がどうなったかは、連絡がないのでわからない。
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