第23話 定時制高校はなぜ、通信制高校ほど活用され得ていないか?

 定時制高校では、毎日、「授業」が行われる。


 一般に定時制高校もまた、全日制高校同様、進級、そして卒業という従来ながらの学校モデルが踏襲されている(現在の単位制を取入れた学校は除く)。

 これは一見いいように見えるものの、自由度は当然低いままだ。まして修業年限を4年にされては、大学進学を目指す者にいわせれば、「無駄の押し付け」以外の何物でもない。昨今では定時制高校も単位制を導入し、また、法令によって卒業年限が3年に短縮されるなど、制度上も、また個々の学校の取組としても、自由度を高める努力をしていないわけではない。だが、決められた時間に決められた場所に行って授業を受ける「システム」は、これだけ社会が「個人化」し、ライフスタイルも多様化へと舵を切っている中、ユーザーにとってはもとより、運営者にとっても、硬直化したものとなっているように思われる。

 

 そのことは、定時制高校の在籍者数の推移をみれば、はっきりとわかる。

 1980(昭和55)年には全国で約15万人弱いたものの、以後漸減を続け、2016(平成28)年には約9万3千人程度にまで下がっている。36年間で、おおむね4割近くの減少である。少子化や高学歴化などの要素を差し引いても、無視できないほどの減少率である。もっともこれが公立のトップ進学校であれば、いくらか定員を増やしても希望者数は増えこそすれ減りはしないだろう(学校全体の学力のレベルダウンを招く可能性については話が別)が、定時制高校の場合、それはまずもって期待し得ない。

 これでは、定時制高校の統廃合が進むのも無理はない。

 

 私の住む岡山市内には、定時制高校はかつて烏城高校の他に2校あり、その3校で「定校祭(定時制高校祭)」というものも年1回、例年毎年11月に開かれていた。

 しかし、烏城高校以外の岡山市立の2校、岡山市立岡山商業高等学校(岡山市立旭中学校、現在の同岡山中央中学校の敷地内にあった)と岡山市立岡山工業高等学校(岡山県立岡山工業高等学校の敷地内にあった。全日制の工業高校と設備を共用できるわけであるから、合理的な設置方法であったといえよう)は、生徒減のため統廃合された。


 現在両校は、岡山市立岡山後楽館中学校・高等学校として「合併」され、形態は変わっても形式的には「存続」しているとも言える状況にある。

 だが、定時制高校としての役割も実業高校としての役割も、ともに完全に終えている。実質的には両校とも「廃校」とみなしてよいだろう。

 市立後楽館中高というのは、実質的には「新設」とみなすべき学校である。


 今時、夕方の時間をほぼ毎日つぶしてまで、「実業科目」を学ぼうなどという時代ではない。全日制高校にしても、実業高校は縮小傾向にある。

 いい悪いではない。それが、現実である。


 確かに現在の定時制高校は、昼夜開講制にしたり、単位制に移行したりするなど、柔軟な対応をとっている。だが、決まった時間に必ず出てきて授業を受ける、というシステムになじまない生徒たちの受け皿にはなり切れない。

 定時制高校はこれまで、一定数の不登校や高校中退者、あるいは高校受験に失敗した層の受け皿となりえてきたし、現在でもその役割は否定されてはいない。

 しかしながら、かねての高校進学率の上昇、少子化、そして社会全体の個人化の流れには抗いきれず、苦戦していると言えよう。

 株式会社立まである通信制高校と異なり、今なお定時制高校として存在している学校のほとんどは、公立である。

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