第12話 若い時の孤独は、買ってでも味わえ
学校などの場所に属さず、そうかと言ってアルバイトでもいいから仕事をするというわけでもない。
ひたすら、一人で勉強・・・。
となれば、確かに、表面的には孤独な状況である。
ほんのちょっとのことで人と会話できる余地があるだけでも、人間というのは救われるもの。精神科医で受験技術評論家の和田秀樹氏も、大検の利用については、その点を危惧することを著書で書かれていた。経験者として、それは確かに同意できる。
だが、「学校に属して、ただ通いさえすれば友だちができる」のか?
もしそうだというなら、皮相な見立てとしか言いようがない。
周囲に人がただ居りさえすれば、孤独は回避できるというものでもないだろう。
そんな皮相な見立てが「いじめ」の温床になる閉鎖社会の元凶である、というのは、言い過ぎだろうか?
まずは、ほんの数人でもいいから、自分の話を「真剣に」聞いてくれる人を確保すること。話は、そこからじゃないかな。
もちろん、そういう人たちがいるからといって、「居場所」というものができるとは限らない。それが次の問題。だがこれも、工夫次第でいくらでも作れるもの。学校という枠があるなら、それを使えばいい。
趣味のサークルでもよし、何でもよしだ。
しかし、この10代後半という、様々な人たちと触れ合うことで感受性も人間力も磨かれる多感な時期に、仲間と楽しく、時にぶつかり合って、というのも結構であるが、孤独と真剣に向き合うことも、大事なのではないだろうか。
先日私は、ある人のフェイスブックの記事を読み、ふと思って、こんなことを書いた。
「若い時の孤独は、買ってでも味わえ」
これは言うまでもなく、「若い時の苦労は買ってでもせよ」ということわざのコピーである。私に言わせれば、無駄な苦労など買う必要もないと思うが、適度な期間、「孤独」を経験することによって、その後の人生に大きなプラスとなることは間違いない。
中途半端な状況で群れ合うような人生を送ってそれでいいというなら別にこちらがとやかく言う筋合いもないだろうが、「孤独」であるからと言って、卑下する必要などない。
むしろ「孤独感」こそ、若いうちに体験して鍛えることが大事なのではないか。
もちろん、孤独感が過ぎて誰でもいいから殺したいなどという発想になってもらっては困るが(そういう人間が実際に殺人を犯したあかつきには、死刑も含めた容赦ない刑罰をもって償わせるのが妥当と考えているが、それはまた別の話)、適度な「孤独感」を味わうこと、まさに、「一人の時間」をいかに過ごせるようにするかが、その後の人生の糧の質を左右するのである。
現在中日ドラゴンズの監督をされている森繁和氏(風貌から私は「組長」とひそかにお呼びしているが、実際は、やさしい方だと伺っている)は著書「参謀」で、若い選手たちにそのことを常日頃言っておられるそうだ。氏によれば、その時間をパチンコやテレビゲームで過ごしているような選手は伸びない、とのこと。
その「現象」に対する森氏の見立ては分からないが、私なりの見立ては、こうだ。
確かに、パチンコもゲームも、一人で何かに向き合うものではある。
これらは、対象物に向き合うことで、確かに孤独をいやしてもくれよう。
だが、ある意味それは、孤独からの「精神的逃避」という要素も持ち合わせているものだから、その場は癒されるかもしれないが、所詮、「その場限り」であり、結果的に、そこでは成長に結びついていかない、ということではなかろうか。
森氏は、それらよりもまだ、人と向き合う麻雀などの方がいいと言う。
私自身は麻雀の経験がないので多くは語れないが、同じ卓をかこっている他者の心理や人間性がわかるものらしい。
私は2回ほど、期日前選挙の「立会」をしたことがある。
朝から夜まで、基本的に投票所で座っているだけなのだが、投票に来た人たちがどの投票ブースに行くかを予測し、当たったか外れたかを検証してみた(メモは取っていない)。結果、おおむね6割から7割の範囲で予測を当てられるようになった。
これは結構,面白かった。じっと座っているだけでも、その気になれば、何かの楽しみや成長の糧は得られるものである。
適度な孤独感の下、しっかりと自分自身と向き合える場として、「大検」という制度は、私に大きな財産をもたらしてくれた。
これには、感謝してもし切れない。
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