第8話―数学という完成した芸術があっても現実はバラバラな未完成3―
放課後、僕は幼馴染にした約束であるデートに向かった。
日が傾いた明かりは林立する建物を薄く輝かせ装飾をする。時間も時間なのでデートスポットに向かうのは難しく近くのショピングモールに入る。この時間帯だと学生やビジネスマンで賑わいも増していき必然的に人が増えて僕の精神的な体力は摩耗していく。
「ねぇあれ見てよ!かわいくない?」
「ほうクマのぬいぐるみか。
何体かいたのではないか?」
「違うから。ほら魚を抱えたキュートなクマだっているし飛び跳ねるクマとか」
「そうなのか。ユニークなぬいぐるみも作られているのだな」
女の子が重視させる愛くるしさを分析してニーズにあった物と遊び心を忘れずに作られているのだと思案した。
「どれにしよう。ねぇ、どれがいいと思う?」
「ふむ、分からんから好きな物を選べばいいじゃないか」
下手なアドバイスはしないほうがいいとそう応えると口を尖らせて不満そうに「そういう事じゃないのに」と呟いていた。
「買わなくて良かったのか?金銭的に困っているなら買おうが」
「いいよ別に。見ているだけでも楽しいから満足しているよ」
眺めていた乙女だったが結果は何も買わなかった。笑顔で返しているが満足はしていないと幼馴染としては取り繕っているのが見て感じた。
乙女のために行う恋愛シミュレーションなので気を取り直しすとしよう。っとインドア派で理系である僕が気合を入れた所で明るく振る舞うのは稚拙なのは自覚しているので得意な過去の経験をもとにして方程式を考えること。
(あれはゲーセンか。懐かしいなぁ乙女とよくあそこで遊んでいたけ。今はお互い行くことはないが)
規模は小さいゲームセンター。幼い時期は遊ぶものが尽きないと感じていたものだが小さいと感じれるほど僕は成長した。それは隣にいる乙女も同じ気持ちなのかもしれない。このま通り過ぎていく。
「それじゃあ次は喫茶店に寄らない?」
「ああ寄ってみるか」
「あっ、やっぱり今のは無し。
先ずは映画を鑑賞してからでじっくり語りたいから後に」
「軌道変更か。了解した先ずは映画だな」
そういえば中学では彼氏かそれに類似する関係者とデートしたのかまだ知らない。この機に訊いてみるべきかもしれないが、どのタイミングでするべきか悩む。
そんな事を思案していると映画のある階に着き、中断して専念することにした。そして脳によぎる疑問。
「疑問、いずれは訪れるデートの練習相手が僕でよかったのか?
あきらかに役者が違う気がしてならないのだが」
「えっ!?急にとうしたの」
予想外な質問に困り焦りなどがない混ぜった表情と声音。
まだ説明は不足として窺える。ここは端的に発言するべきか。
「ほら僕よりもデートをしているリア充だっているだろう。そういう奴に頼めばよかったのじゃないか僕が相手では得られるものは皆無に等しいだろう」
「嫌よ。だって修治が方がいいよ信頼出来るし隣にいてくれると嬉しいから」
「なるほど。そこまで思ってくれるなら僕なりに頑張って協力はしてみせよう。さて、何を観ようか定番なら青春映画かな」
昨今では少なくなっているが、それでも作られている。ちょうどお互い高校生だし。
「うん。それにしよう修治」
僕がチケットを購入すると乙女は自分の分を僕に払ったので素直に受け取ることにした。断ろうにも乙女は頑なに首を縦に振らないから諦めているのも一つ。
入る前にコーラーを買って中に入る。ほとんどの客席にカップルがいて他には観る作品のファンか役者の方か知らぬが一人で訪れた女性もいる。僕らは前の席から数えて8番目の中央に腰を下ろす。
静かに歓談していた空気は明かりが消えると静謐が訪れる。
そして自宅ではここまで高くしない大音量で流れる広告。
始まるかと考えてドリンクのストローで吸い口から弾ける味に癒やされる。
(青春映画って現実に無い出来度とかあるよなぁ)
現役高校生(ぼっちだが)からして、ここまで物事が綺麗に進むんけがないと矛盾を心の奥でそう思いながらも完成度が高く主人公には少し共感して感動していた。
「んー、面白かった」
出入り口を出ると乙女は腕を上げて伸びをする。なかなか悪くなかった。第一印象はつまんなそうだと思ったが、普通に面白いものだった。
「次は喫茶店で語るのだな」
「そうだけど。もしかして修治、面白かった?」
「まぁまぁであったなぁ」
横に逸らして淡々と返事したが視線を前方に戻すと乙女は微笑を浮かべて――
「本当かな?」
速度を上げた乙女は振り返り手を後ろに組んで顔を覗き込み、イタズラ笑みを浮かべていた。
喫茶店では映画をお互いに金銭に触れたシーンを語る。お店を後にして、そろそろ帰ろうかと話題をしていると来た道に戻りあのゲーセンが視界に入る。カップルが
楽しげに箱型を出て写真を見て楽しそうにしていた。
ああ、プリクラか。そういえば乙女とよく撮っていたなぁ。
「乙女よかったら僕とプリクラを撮らないか?」
するとその場で足が止まり呆然としていた。信じられないものを見るような目で。往来がそれなりに激しいところで止まっているのを
どうかと思うが、僕も邪魔にならないよう乙女の前に立つ。
「記念だよ。ほら疑似デートであっても行く機会はあるだろう」
「そ、そうだよねぇ。うん!なら入ろう修治・・・やった。嬉しい」
「そ、そうだな」
よく分からぬが喜んでいるならいいか。久しぶりに入ると、カップルな雰囲気が漂っているなぁと
感じに、何なのだそれは?自分にツッコミをした。とまかく乙女は
鼻歌を歌わんばかりに屈託のない笑顔と頬を赤らめて設定をしていく。男だからなのかその設定が複雑そうに見える。
ようやく撮ると落ちてきた写真を大事に胸を抱くように持つ。
はしゃいで喜ぶ乙女を僕は郷愁感で頬を緩めて穏やかにあの頃ように帰って浮かべていた。
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