第4話―研究テーマはモブの告白3―

雲が浮かんでいるものの澄んだ青空。心まで澄まれるように明るい喧騒。坂に登っていく道行く人ら。その中に僕も歩けば変わらずのぼっちなのにリア充の仲間になった感覚がする。

そして心が澄まれるのは必ずも全員ではない。


「ハァー」


ため息をこぼす。あそこまでやってPVがたったの2。新作を投稿したら脅威の数字に身体が怯えたものだ。


(何が悪かったのだ。あそこまで研究していたのに・・・はは、センスが無いのかな僕は)


きっとタイミングが悪いとパソコン画面に怒ったがタイトルなど

入りやすいように改良しないといけないと負の感情が収まる今のぼっち通学路で気づいた。

諦めが悪いのが僕だ。そう自分に活を入れて教室に入れば僕に視線を向けては噂話をしていた。

話のさかなにされて

居心地の悪さはあった。まるで入学してばかり以来の反応だ。


「お、おい津島!先輩に告白したってうわさになっているぞ。

どういうことだよ」


後ろの引き戸から入った僕の前に歩いてやって来たのは知り合いの島崎だ。


「先輩に告白か・・・・・ああ、彼女か。確か樋口ひぐちなんとやら」


そう言えばモブキャラの情動とは行動原理が何かをその研究として

行った昨日の出来事を言っているのだ。

もちろん、このプランは振られるのが結果になるのが確信して実行した。

あの半井桃水でも振られたのに根暗の僕が付き合えるわけがない。


「はぁー。津島のそういうところ無頓着な所には敬意を払ってやるけど」


「いや、普通に噂されて不快な気持ちになっているよ」


「そうか。もうそこはいいんだけどヴァージニアには伝えたのか?無許可であんな事をしてどうなるか知らないぞ。

あと噂が不快なら俺がなんとかしてやるぞ」


「気持ちは嬉しいが慣れているから平気だ。乙女には伝えていないが」


教室で世間話や軽快な会話をするだけの仲なのに心配してくれるとは少しだけ嬉しくなるものだ。

解せないのはヴァージニアの名が出たのは彼女までも心配をしているのか分からない所だけど。

乙女をわざわざ伝えおくよう煩わせることも無いと考慮

して伝えなかった。簡単ですぐに終わる研究であったし。


「やっぱりか。これだけ噂をされているからキョトンとしないで

真摯的に謝ったほうがいい。

友人としての助言だ」


「おぉー!僕と友人だったのか。悪くない響きだ」


「お、おう・・・それよりもヴァージニアは怒る。噂を耳にしない方が無理な話だからなぁ。

好きなのはヴァージニアとか大事なのはヴァージニアだけだ!ってさり気なくアピールしろよ」


仕方ないなぁと優しげな眼差しを向けてくれるのは光栄なのだが、どうしてそこまでしなくては

いけないのか疑問点だ。


「よく分からぬが謝ればいいのか?」


「ああ、またやるとか絶対にNG」


「善処する」


「それってしないセリフだろ。

まぁ、いいけど俺は忠告したぞ」


友人は、リア充グループの輪に行くのを僕は軽く手を振って見送る。

まぁ、すぐ近く席なのだが。ともかく僕はグラウンドが見下ろせる一番後ろの窓際の席をゆっくりと腰を下ろす。


(なろう系で書籍化したラノベを今日も読むとするか)


表紙を分からないよう一般カバーラノベを開く。水着衣装のロングヘアーの美少女のしおりを机に置く。噂話していた男子には「あれは!?」と同士を見つけたような反応を。

女子には「うわぁー」と生理的に無理とか言われたみたいなトーン。

我関われかんせず読者していると裸になった美少女が主人公に照れるサービスシーンの挿絵さしえページで何者かが本を取り上げられる。

何をするのかと見上げると憤激の色をみなぎらせた乙女だった。

彼女は机をバン!っとてのひらで音がよく響き叩いた。


「な、なんでしょうか乙女さん?」


「変な噂が流れているのだけど・・・樋口先輩に告白したって」


「そのようですね」


頬から嫌な汗が伝っている。

どうやら恐怖による精神性発汗せいしんせいはっかんによるものだ。この汗は短期間ですぐに止まるものだが、そんなことよりも目の前が先決だと大昔にあった本能がそう警鐘を鳴らす。


「それで告白はしたの?」


「・・・研究になればいいなぁと思いしました」


乙女が放つ冷気。いや、そう感じさせる冷酷れいこくな女王ごとく眼光。そして静かな怒り。

腕を組んで眼下から天上の住人による見下され方に僕の身体は勝手に震え始めた。


「へぇー、研究していたんだ。

それは私と生意気な後輩の季代きよだけじゃなかったの」


「もちろんだ。樋口なんとやらは告白しただけで研究対象じゃない。

ラブレターや周到な準備をして

一日だけの関係で終わらせるつもりだったのだよ」


研究対象の誇りによる怒りだと仮説にある僕はそれを信じてなだめようとした。

教室中に流れるのは静寂せいじゃく。静観する噂をしていた人らも島崎も静まり返っている。

肩を震わせて下に向いていた顔をキッと上げた乙女は涙があふれていた。


「バカ・・・バカ、ばぁバカァァ!

そんな事を思っていたなんて最低。

どうして私の気持ちを理解しようとしないのよぉぉ!!」


怒りを爆発させた乙女は僕の頭をこぶしを落とす。両手の拳にした下の方を何度も上げては落とされる果敢に攻撃を繰り返さされる。


「いたい!痛ぁいから!やめてほしい」


「私の心の方が痛いんだから!

勝手に・・・一人ぼっちなって毎日トイレでボッチお弁当を食べればいいんだからぁぁーー!!」


グサッ。なんて威力を言うんだ。

乙女は号泣して、そのまま引き戸をくぐり廊下に走り去る。

物理攻撃も受けて精神攻撃の両方を凄まじいダメージを受けてしまい背もたれに体重を預かる。


「おい、早く追いかけないと取り返しつかないんじゃないか。

まったく何をやっているんだよ津島。ほら、走れよ」


僕の肩をつかんで揺らすのは島崎。

何故と目で訴えるが伝わらず僕は言われた通りに入っていた乙女を追いかけるのであった。理不尽すぎる。

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