わたしのお願い事
太陽はもうほとんど沈んだけれど、雲はオレンジ色に照らされていて、まだ空に明るさが残っている。
でも、天の川もうっすら見えていて、夕焼け空でも星空でもないような、なんだか不思議な感じがする。
きれいなグラデーションだけれど、境目がどこか曖昧で、不安定で――たとえば一時間後、星空へと変わるのではなく、うっかり太陽が上ったとしても、誰も気づかないのではないか。
空想だなあ、と一人で苦笑しながら他の人の短冊を見るけれど、他の人が書いたお願い事は、やっぱり神社みたいだった。
あーちゃんと、ずっと一緒にいたい。
巾着袋から取り出した短冊は、恥ずかしいけれども紛れもない、わたしのお願い事だ。
七夕まつりの笹は、お祭りの最後に、短冊ごと神社で焼くことになっている。
そこまでを考えるなら、神社みたいなお願い事というのも、正しいと思う。
煙と一緒に上ったお願い事が、天の川の向こうにまで届いて、神様が聞き届けてくれる。そんなことも、あるのかもしれない。
わたしは恥ずかしいお願い事の短冊を、笹の葉が茂っていて目立たなさそうな場所に結わえた。
これからもう一枚短冊を書くけれど、そちらは家内安全、商売繁盛のような、神社のご利益みたいなお願い事を書きます。
だから、もしもあーちゃんも同じ気持ちだったとしたら、わたしの本当のお願い事が叶うといいな。
小さく祈るように手を合わせてから、あーちゃんのもとへと向かった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます