わたしのお願い事

 太陽はもうほとんど沈んだけれど、雲はオレンジ色に照らされていて、まだ空に明るさが残っている。

 でも、天の川もうっすら見えていて、夕焼け空でも星空でもないような、なんだか不思議な感じがする。

 きれいなグラデーションだけれど、境目がどこか曖昧で、不安定で――たとえば一時間後、星空へと変わるのではなく、うっかり太陽が上ったとしても、誰も気づかないのではないか。

 空想だなあ、と一人で苦笑しながら他の人の短冊を見るけれど、他の人が書いたお願い事は、やっぱり神社みたいだった。


 あーちゃんと、ずっと一緒にいたい。

 巾着袋から取り出した短冊は、恥ずかしいけれども紛れもない、わたしのお願い事だ。


 七夕まつりの笹は、お祭りの最後に、短冊ごと神社で焼くことになっている。

 そこまでを考えるなら、神社みたいなお願い事というのも、正しいと思う。

 煙と一緒に上ったお願い事が、天の川の向こうにまで届いて、神様が聞き届けてくれる。そんなことも、あるのかもしれない。

 わたしは恥ずかしいお願い事の短冊を、笹の葉が茂っていて目立たなさそうな場所に結わえた。


 これからもう一枚短冊を書くけれど、そちらは家内安全、商売繁盛のような、神社のご利益みたいなお願い事を書きます。

 だから、もしもあーちゃんも同じ気持ちだったとしたら、わたしの本当のお願い事が叶うといいな。

 小さく祈るように手を合わせてから、あーちゃんのもとへと向かった。

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