4:人喰いの村<前編>
――――――― 2 ―――――――
「まったく、お
「……」
「記憶に残しちまったら後引くもんを。そんな事を知らないお主ではあるまい?」
「……――」
「これはガキの事を
「――よく
「おお、怖ッ! 分かった分かった、黙っておくさ」
―――――
――辺境の小さな村。
支払えるのか、報酬を?
そんな事、わたしが気に掛ける事ではない、か。
それにしても――
「お待ちしておりました、ディーサイド様!」
「よくいらっしゃって下さいました、助かります」
「ようこそ、救世主様!」
「有難う御座います、ディーサイド様。宿の準備は出来ておりますのでご案内致します」
一同に、笑顔――歓迎されている?
わたしを、いや、わたし達の結社を。
忌まわしい
それ故、いつからか
ディーサイドが鬼衆を呼ぶ、と。
その表情が、姿勢が、作っているものだと、
それでもまあ、
取り敢えず、宿泊先とやらへの案内人について行こう。野宿の方が落ち着くんだが
「おい! おいッ! おい、マリア!」
声を
「……なんだ? 人が近くにいる時に話し掛けるなと云っているだろ」
「お主、気付いておらぬ訳ではあるまい?」
「――なんのことだ」
「
「――ああ、分かってる」
分かっているさ。
村役場で出会った者、集まっていた
普通、人に化けた鬼衆と生活を共にする家族や屋内で長時間労働をする職場の者等、ある程度
一種異様――
だが、動くには早過ぎる。少し、探る必要があるのは確かだ。
「こちらに御座います、ディーサイド様」
「――宿、……には見えないが?」
「ああ、すみません。
「――なるほど」
「後程、お食事をお持ち致しますので、まずはお部屋にてお
「……ああ」
集落から少し離れた
別段、綺麗でも豪華でもないが、一人で使うには大き過ぎる
確かに、見知らぬ旅人同士でもシェア出来そう程の間取りがある。ゲストハウスとしては十分、と云ったところか。
よく手入れがなされている。修繕や補修もしっかりしている。十分、いや、十二分過ぎる程。
それだけに違和感。
人の住まない家屋というものは唯、人が住まないという理由だけでガタつくもの。いつ来るとも知れない旅人の為だけに用意されたゲストハウスに、ここ迄労力を
だが――
「こりゃ
「……」
「
「――そうだな」
「
「――ああ」
とは云っても、これに気付く人間はほぼいないだろう。
清掃は
そう、これは――
「こりゃ~、アレだ」
「……」
「
なるほど――
探りを入れる迄動かずにいるつもりだったが、動く迄もない、といったところか。
この村も
―――――
「お待たせ致しました。お食事をお持ちしました。粗末なもので恐縮ですが、どうかお召し上がり下さい」
「――どうも」
「お食事が済みました
早めの夕食。
わざわざご丁寧に、ここ迄持ってくるとは
蒸した色取り
もし、わたしが唯の人間だったら恐らく、
「どうした? 手をつけんのか? 全くお主らときたら小食にも程があるわ」
小食。
その通りだ。わたし達は
勿論、空腹感はある。唯、そんなものはあの“飢餓感”に比べれば、どうという訳でもない。
尤もこれは、今回のこれに限っては
「化物
「どうかしたのか?」
「混入されている」
「!? 毒物か?」
「凡そ、
どんな効果を
実に安直な手立てではあるが、長旅をして来て疲弊し切った者達を
慣れているな、こいつらは。
さて――
「どうする? 一口もつけない訳には行くまい」
「そうだな――頼む」
「いつも通り、と云う事か。全く、
「それくらいしか
「……
左手を食器に近付け、
――ガッ!
ガガッ、グチュ、ガッガッ、グシュ、グジュグシ、グジュルグジュッ、ゴキュッ!
ゲェ~ッフ――
見事なものだ。
あっと云う間に平らげたか、この化物め。
作り笑いを忘れてはいないが
綺麗さっぱりと片付いた食器に視線を落とし、ほっと
損な役回り、そう思っているのだろうか。
なんて――
傲慢。
唯、それも人間。悪く云うつもりは毛頭ない。だから――
だから、わたしも悪びれはしない。
「ありがとうございました。とても、――美味しかったです」
「……あっ、はい! 喜んで戴けて幸いです」
どうしようもないくらい馬鹿馬鹿しい。
本当の化物は一体、どっちなんだ。
まあ、どうでもいい、か。
そんな
――唯、
夜は更けて行く――
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