第7話 ユニークスキル



 ステータスカードを発行したあと、陛下から数軒住む所を用意しているから好きな所を選ぶ様にとのことで物件選びをしたのだけれど……。


「あの、普通の家ってないですかね? お屋敷じゃなくて!!」


 そう言えば子犬の様な困った笑みを浮かべるアレン様。そうですよね、陛下がそんな庶民的な建物用意してる訳ないですよね!


「一番小さい所でお願いします」

「畏まりました」


 一番小さいお屋敷とはいえ普通に綺麗な庭まで付いてるし、何部屋あるんですかね?と言いたい。


 推しくんに貢ぐ為に節約に節約を重ねて来た私には住んでいるだけで精神が擦り減りそう。家賃幾らくらい掛かるんだ、掃除も一日掛けても終わらなそうだし豪華な調度品たちに囲まれて息が詰まる。


「体調はいかがですか?」

「問題ありません、でも少しお腹空きました」

「お疲れかと思いますが、街へ行ってみますか?」

「はい! 是非!」


 馬車でチラッと見ただけだったから凄く気になってたんだよね、美味しそうな屋台も並んでたみたいだし楽しみだな。


 SEVENではデートイベントみたいなのは無かったし、アレン様エスコートで街を歩けるなんてこれは実質デートじゃないですか!!


 今は好感度低いけど高くなったら人混みで逸れないように〜って手を差し出してくれたり、お互いの物食べ比べしてそっちも美味しいですねなんて笑い合うプラトニックラブイベント発生したりしないかなぁ〜!!!


『スキル:妄想発動 HP/MPは満タンです』


「へ?」

「どうかなさいましたか?」

「何か急に変なの出て来たんですけど、これなんですか?」


 目の前に現れたウィンドウの様なものを指差すもアレン様は首を傾げる。


「私には見えておりませんが、何かが現れたのですか?」

「スキルが発動したって書いてあります」


 しばらくするとウィンドウは消えてしまった、アレン様もそんな話は聞いたことがないらしく困っていたけど異世界人だからそういう事もあるのかも知れないと言われて納得してしまった。


 確かに異世界人ならこんなことがあってもおかしくない、ゲーム画面のようなものと思えばいいのだろう。ただ急に目の前に現れるのはびっくりするからやめて欲しい。




「メインストリートはここから隣の区画までになっています、ただ一本道を入るだけで物騒な連中もいますので無闇に人通りの少ない場所へは行かないことをオススメします」


 陛下が街を治めてから治安は良くなったが、どの国でもやはり影となる場所や組織は消えることはないのだという。


 それもそうだ、光が強ければ影は濃くなる様に国が豊かであればあるだけそうでは無い所との差は広がる。


「ここは屋台が多いですが東の区画は商業が盛んで様々なショップやレストランやバーが立ち並んでいます」

「お城を囲む様に色んなものがあるんですね」

「西区画はギルドや行商人たちが多く出入りしていて情報を得るには最適です、北の区画は基本我々の宿舎や訓練場等があるだけなのであまり来ても楽しくないと思います」


 なるほど、区画ごとに特化しているものが違うのは目的事に向かいやすくて助かるかも。


 ギルドがあるってことは登録しにいくのもありかなぁ、商業をするにも冒険家にするにもギルドに入ってて損はなさそう。


「北の区画は自由に入れるんですか?」

「自由にとは言えませんが、スズカ様でしたら問題なく出入り出来ると思いますよ」


 爽やかな笑顔ありがとうございます!!


 ってことは差し入れしに行ったりこっそり訓練中のアレン様が覗けたりしちゃうってこと??


「邪魔にならない程度に行かせて貰いますね」




 アレン様と屋台で食べ歩きという最高なイベントを満喫していたが、やはり若くてイケメンや騎士団長人気の様だ街の人たちもはしゃいでいる。


 声を掛ける人はいなくても頬を赤く染めて惚けていたり、涙目になっている人もいてどの世界どの時代でもやっぱり推しの存在は偉大なのだと実感した。


 街中で普通に生活してて目の前に推し現れたら死にますもん。とりあえず目一杯息吸うよね。



「今日は本当にありがとうございました」

「いえ、お役に立てて光栄です」

「命を救われ、何から何までお世話して貰って……いつか必ずお礼をさせて下さい」

「とんでもない、騎士として当然の事をしたまでですのでお気になさらずに」


 ゆっくりと休んでくださいと丁寧にお辞儀をして帰っていった。


「あーっ、推しが尊すぎて死んでもいい」




 屋敷の中で一番狭くて落ち着く部屋が使用人の部屋だったのでそこを自室にしたのだが、ベッドが固くて身体が痛い。


「色んなもの分泌されてか環境が変わったからか全然眠れない」


 とはいえテレビもゲームも漫画もない、何なら電気という概念がない。夜になったらすることがない。どうしたらいいんだ!?


「そうだ、昼間のスキルって何だったんだろ」


 ステータスカードを作ったけどここで見れる訳じゃないし、いや……可能性はある。


「ステータスオープン!!」


 声高々に唱えたもののステータスは出て来ることはなく、痛い静寂が響いた。


 いけると思ったんだけどなぁ、あと残る可能性は鑑定スキルで自分を鑑定するくらいか。そもそもスキルの使い方わからないんだよな。


「鑑定!」


 唱えても何もならない、これはあれか鑑定するものが目に見えてないとダメなのかも?


 自分の胴体を見ながら鑑定と唱えると目の前にウィンドウが広がりステータスが表示された。


「やった、大成功!」


 このユニークスキルって奴が発動したってことだよね、発動条件はわかったけど効果とかどんなものなんだろ。触れたりするのかな?


 そっとウィンドウに指を伸ばし触れると別ウィンドウが表示された。


【ユニークスキル:妄想】

 発動中HP/MP回復、状態異常回復。


 いや、妄想強過ぎかよ!!

 どういう原理なの?確かに妄想してれば幸せにはなれるし、推し摂取してたら体調悪いのとか無くなる気がするけどそういうことなの!?


 となるとこのもうひとつのユニークスキル、ガチャがとっても気になる。


【ユニークスキル:ガチャ】

 1回50000G 排出一覧


 何のガチャなの!?


 とりあえず排出一覧を押してみると、URからNまであるらしく定期的に排出内容は変わるとの説明の下にとんでもないものが書かれていた。



 UR チェキ本体

 UR スマートフォン

 SSR アレン・キングスベル フィギュア


 だと!?

 他は???表示が殆どだけど、チェキにスマホ?

 そんなの欲しいに決まってるだろ!!!


 1回5万がどんなもんか知らんけど、明日から再び社畜極めるしかあるまいよ!!!


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