第5話 皇帝陛下に殺される

 


「ほぉ、そやつが異世界人か……名は?」


 転生人生最初で最後の日かも知れません。




 アレン様の属する第7騎士団が周辺の調査、報告を済ませていたらしくわざわざ私用の着替えまで持ってきてくれた。


 のだが、この第7騎士団が問題だった。


 アレン様はやっぱりレオン様なのかも知れない、というのもSEVENは第7騎士団の内の選ばれし7人が魔王討伐に狩りでるストーリーなのだ。


 でも、アレン様は見た目も紳士さも一緒だけどレオン様とは違うんだよね? ってことはこの世界はSEVENとは違うってこと?


「そんなに甘くはないかぁ……」

「では向かいましょうか」


 ひぇええ、白馬に跨るアレン様!!!

 王子様かアレン様しか許されないビジュアル、美しいがすぎるじゃろーて!!!


「神しゃまありがとう」


 一緒に乗馬イベントは起こらなかったけど、私の為に用意してくれた馬車に乗って帝都へ向かう。


 流石に揺れるし、お尻痛くなるなぁ……。

 自転車も車も電車や人力車だって技術の進歩で快適な移動が出来るようになったのね。



 しばらく走って帝国へ。


 とても大きく賑やかな街の中央に堂々と聳えるお城。豪華でいて品のある城内を進み皇帝陛下との謁見の間へ通される。


 やばい、口から心臓出る。吐く。

 人生どう生きてたら皇帝に会うことがあるのさ!


「皇帝陛下、第7騎士団帰還致しました」

「ご苦労。ほぉ、そやつが異世界人か……名は?」

「立花 涼香と申します」


 緊張しすぎて声が震える。怖すぎてずっと下向いてることしか出来ない。


「そう畏まらなくてもよい、面を上げよ」

「は、はい……へ?」


 黒髪に燃えるような赤い瞳。

 泣きボクロがとてもえっちなその顔!!!


 グレイくん!??

 な、え? 何でここにグレイくんが!?


 人外種族がテーマの乙女ゲームに登場するヴァンパイアのグレイくん。


「お、推しくんがこんな所にまで……無理すぎるだろこの世界天国かよ、いい加減にしろよ」

「はははっ、何を言っているのかさっぱりだがそんなに拝まれるのは悪い気がせんな」


 あまり表情を変えない無表情キャラのグレイくんとは違い不敵な笑みを浮かべる皇帝陛下。


 はぁーーーー???

 推しのURスチルかよ、殺す気か???


「この帝国に伝わる神話にも異世界人について書かれている」

「神話?」

「この世界の女神ルニ様が異世界から使いを送るとその国は豊かになるのだとか」

「これは歓迎されているということで大丈夫ですか?」


 はい、と笑顔で答えてくれるアレン様。

 今日一日で推しくん二人の笑顔浴びっぱなしでもう本当に消し炭になるのでやめてくれ。


 オタクは供給過多には弱いんです!!!


 でも欲張りだから、いいよ!もっと下さい!!


「生活の保証はしよう、好きに生きるといい」


 そう言い残して皇帝陛下は部屋を後にした。

 緊張が解けてどっと冷や汗が。


「陛下の許しも貰えましたし、今後どうしましょうか? 」

「どうしましょうね……あはは」



 好きに生きていいですよ。

 そんなこと言われると意外と出てこないのね。

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