第2話 異世界転生
痛い、苦しい、寒い。
誰か……助けて……………。
「しょうがないなぁ〜」
誰かに腕を引かれた感覚と共に少しずつ意識が浮上する。痛みも、苦しさも、寒さもなくなっていく。
「大丈夫かい?」
「っ? 誰?」
ゆっくり目を開けると銀髪に青い目が似合う綺麗な顔をした男の子が目の前にいた。周りを見渡すと真っ白な空間にぽつんと私達だけが存在していた。
「僕は君たちが生きていた世界の創造主」
「創造主? 神様ってこと?」
「君たちはそう呼んでいるね、名前はネロ」
よろしくねと笑って手を差し伸べる。
握手かと思い手を握り返すとそのまま立ち上がらせてくれた。
「ここは一体どこなんでしょう? 私もしかして」
「うん、死んだよ」
笑顔でサラリと言い放つネロ。
美少年の微笑み眩しい。
「後頭部打って死ぬとは……」
「んーっ、それで死んだ訳じゃないよ?」
ネロの話によれば私の死因はこうだ。
足を滑らせ後頭部を壁に強打。1combo!
その勢いで浴槽に通電したモバイルバッテリーが落ちて感電 2combo!!
浴槽に沈んだ身体はそのまま溺死 3combo!!!
という事らしい。
私を助けて? くれたのも所謂神の気まぐれなのだと言う。出来ることなら生き返らせて欲しい。
「それは無理、でも違う世界になら送れるよ」
「違う世界?」
「僕達はそれぞれが生み出した世界の創造主であり管理者だから、他の世界もあるってことさ」
所謂、異世界とかパラレルワールドってこと?
それってつまり異世界転生!?
「それは困る! 今すぐ他の人間として転生することは出来ないの?」
「君たちの言う輪廻転生ってあくまで君たちの想像だろう? 僕の世界では消滅と誕生だけ、君を助けたのは気まぐれだって言ったじゃないか」
「そんな……推しくんの新ビジュも見れてないしこれから見れるはずだった推しくんたちも見れないってこと!?」
そんなの、そんなのってない……。
「それならこのまま消滅する?」
「……それは」
どの道もう推しくんたちを愛でることが出来ないのなら、いっその事開き直って新しい人生を見つけるのも良いのかもしれない。
ただ働くだけの人生より、報われない恋をし続けるより、新しくやり直す方が……。
「他の世界に、いきます」
「うん、それがいい」
「キャラメイクとか出来る?」
「きゃらめ?」
どうせなら可能な限り楽しみたい、わがまま通せるだけ通して貰って充実した来世を!!
「見た目を美しく出来る? あとはゲームみたいな世界とか楽しいと思わない?」
ほら、私たちの世界では今乙女ゲームの世界に転生とか流行ってるし!!
そしたら推しくんを攻略する人生じゃない!!!
「まあ、見た目をいじるくらい簡単だけどゲームっていうのは君たちが作った仮想世界に似た世界がいいってことかい?」
「そう! 魔法とか王子様とか!」
「ルニ辺りの世界が近いのかな……」
ウンウン唸って首を傾げては何かスッキリした顔でこちらに笑みを向ける。
「ん?」
「ルニが君を受け入れてくれるそうだよ、よかったね」
「あ、えっと、うん?」
何かを考えていた訳ではなく話をつけていたのか、流石は創造主何でも出来るんだな。
「とりあえず見た目を美しくって事だったけど、どんなものがいいのかな?」
「そうね、金髪に碧眼出来れば緑っぽい青がいいかな、そして白く透き通る様な肌!ぱっちり二重で綺麗に伸びた睫毛!!」
「なるほどね、歳は?」
「結婚適齢期より少し前くらいで!!」
私には見えないけど空中でタブレットを操作するみたいに何かをしてる。キャラメイクしてくれてるのかな。
「よし完了、じゃあ次の世界でも頑張って」
「え? もうお別……れ? へ?」
トンっと身体を押されそのまま後ろに倒れる、目の前にはニコリと微笑んでこちらに手を振るネロ。
「君の新たな人生に祝福を」
「きゃああああああああああ!!!!」
神様に笑顔で突き落とされました。
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