11 ソル特製モリモリ栄養ドリンク(〇〇剤)







 チュンチュンチュンチュン



「…………あぁ、朝か」



 カーテンの隙間から朝日が差し込む。俺は昨晩、ある試練を乗り越えた。そう、漢の試練というものを……



 それは、昨晩へと遡る。



「あ!お帰りなさい!シンタ!」


「よう!ご苦労さん!どうだった?魔道師館は?」


 酒屋に帰ると、リリィとマスターが俺の帰りを待ってくれていた。


「ただいま帰りました~。リリィもいたんだね、ただいま!魔道師館めちゃくちゃ楽しかったっすよ!!」


 早速俺は、魔道師館での出来事を2人に話し始めた。


「ほぉ。そうかそうか、回復薬の調合をやらせてもらってたのか。良かったな~シンタ」


「うんうん!あ、これがその特製モリモリ栄養ドリンク?凄い色ね。気になるし、ちょっとだけ飲んでみたら?」


「確かにちょっと気になるなぁ。んーでもそれどっかで見たことあるような気がするんだが……うーん、どこだったか……?」


 マスターはそう言いながら首を傾げた。


「うーん。まぁ、栄養ドリンクって言ってたし、どこかで販売してるかもっすね。まぁ、俺も気になるし、ちょっと飲んでみちゃおっかな!」


「飲もー!飲もー!私もちょっとだけ飲みたーい!」


 って言われたけど、まあいいか。みんな気になってるし。


 俺はエリーゼさんの忠告を聞かずに、紫の液体を少しだけグラスに注いでから、口へと含んでみた。


「……ん? あ~でもけっこう美味しいかも?」


「え~ほんと? 私ものみたーい!」


 リリィが飲みたそうにしてるので、もう一つグラスを借りてドリンクを注ごうとした、その瞬間だった。


 ……ドッ


 何故か、ちょっと体が熱くなってきた。


 てか、あ、ちょ、やばい。俺の、俺の……


 俺のムスコが!!!!!!!


「……シンタ?どうしたの?」


 リリィはそう言って、心配そうに俺の顔を覗き込んだ。あ、リリィの可愛い顔が目の前に……やばい、襲い……たいじゃない!!!


 俺は徐々に下半身がムズムズと熱くなっていくのを感じつつも、ムスコを抑えながら立ち上がった。


「ちょ、ちょちょちょっと、俺部屋に!部屋に行ってくる!!」


「え!ちょっと、シンタ!?」


 俺はリリィの声を無視して、紫色の瓶を持って部屋へとダッシュした。マスターはそんな俺の反応を見て、ハッと何かを思い出した。


「アーハン?そういう事か」




 その頃。急いで階段を駆け上がった俺は部屋に入り、ガチャンとしっかり鍵を閉めた。そして、自分の視線をムズムズと熱くなるムスコに向けた。


 ななななな、なんだこれえええ!?


 ……俺のムスコが元気モリモリになっている。


 あ、危なかった。もう少し遅ければ、理性が効かずにリリィを襲ってしまうところだった。くそ、なんなんだよ、このドリンク……


 俺はそう思いながら、紫色の液体が入っている瓶を睨みつけた。よくよく見てみると、さっきまでは紫色の液体で分からなかったが、紫色の字でなにやら小さく文字が書かれていた。


『THE☆即効性元気モリモリ精力剤☆飲めばたちまち、元気のなかった君のムスコが元気になるよ☆』


 ………


 ななななな、なんじゃそりゃあああ!?


 元気モリモリ過ぎるわ!!!!

 効き目早すぎだろうが!!!!!

 そんでもってなんか、ちょいちょい出てくる☆腹立つんじゃああああああ~~!!



 コンコンコン


 俺が心の中で叫び声を上げていると、扉からノックする音が聞こえた。


「シンタ~?大丈夫?ドア開けてもいい??」


 リリィだ。リリィの声になぜか俺のムスコも反応する。嘘だろ、声だけでもですか?


「だだだめ!!!絶対だめ!!」


「え、大丈夫なの?……あ、鍵閉まってる」


 リリィがドアノブをガチャガチャと鳴らす。


 あ~!!俺の手!!こら!鍵を開けようとするんじゃない!無心になるんだ!悟りを拓こう。


 ………


 ムク、ムクムクムクムク。


 ……ああぁ!!だめだだめだだめだだめだだめだああ!!何がとは言わないが、だめだああああ!リリィ……頼むから早く、俺から逃げてくれ……


 俺が心の中で葛藤していると、扉の向こうからマスターの声も聞こえてきた。


「まあまあ、待て待て、リリィ。あ~なんだ。男ってやつぁは色々と大変なんだ。今日はとりあえずお家へお帰り。なあ?シンター?」


 そう呼び掛けるマスターに、俺は荒ぶりそうになるムスコを押さえながら、早口で声を上げた。


「そそそそそそ、そうして頂けると有難いですーーー!!」


 そう伝えると、扉の向こうで2人がなにか会話をしている声が聞こえたが、何を話しているかまでは分からなかった。


 数分後、会話が終わったのか、扉の向こうからリリィが俺に呼びかけた。


「じゃあ、シンタ私帰るね!お大事にねー!」


 ……ん?なんて言って説得したんだ?マスター。いや、でもありがとう!マスター!!神だよ、あんたは!!メシアだよ!(?)


 マスターがナイスな機転を効かせてくれたおかげで、俺は「けだもの」扱いされる危機を回避できた。



 そうして、その後悶々とするムスコを抱え、俺は一晩を明かした。そう、漢の試練を乗り越えたのだ。


 正直抑えきれなくて自己処理もしたが、わりとすぐ元気になって、ぜんっぜん寝れなかった……ソル特製モリモリ栄養ドリンク(精力剤)、効き目ありすぎだし、効果長過ぎでしょ。


 俺のムスコは、朝方になりスズメがチュンチュン鳴き出す頃に、やっと落ち着いてきたのだ。


 く、くそぉ、まじで一睡もできなかった……ソルのやつ~!次、会ったらホント覚えとけよ~~~~!!


「で、でも……もう、だめだ……ぐーーーーぐーーーー」


 俺はそのまま力尽きて、やっと眠りについた。



 信太、童貞卒業ならず☆



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