第49話 セレブの学校

平日の朝に街を歩くのは久々だ。

でも、生まれ育った町なので新鮮さはまるでない。


高校生であれば、大概一時間目の授業中の

はずだが、意外と高校生が街中を歩いている。

遅刻する正当な理由がある人か、俺のように寝坊した人達だろう。


「金剛高校の生徒は見当たらないな…」

「世界各地の優秀な金持ちが集まった名門校だからね〜、歩いて登校する人が少ないのかもっ!」

「へ〜。詳しそうだな明。進学考えてたのか?」

「うーん、進学するつもりはなかったけど、スカウトは何回か受けてたからっ!」

「へ〜。なんで進学しなかったんだ??勉強しなくても進学できたのに。」

「あっはは!だって!鈴木は金剛高校入れないじゃんっ!」

「たしかに、凡人の俺が入れる高校じゃないな…え?明って俺の進学先で進路決めてたのか?」

「うんっ!」

「そ、そういう重要なことは、適当に決めるなよ!///」

「重要なことじゃんっ!鈴木がいないとつまんないし!」

「/////」


あまりにストレートなアプローチに驚き、明の方を反射的に見る。

明の眼は、俺の眼を真っ直ぐに捉えた。

その澄んだ瞳を見ると裏表の無い言葉だと感じることができた。


「オ、オモチャにしたいだけだろ//いいから、前向いて歩けよ!」

「あっはは!それもあるかも〜」


プロ野球選手の豪速球のような明のアプローチを、童貞の俺が受け止めきれるはずもなく。

照れながら話を中断することしかできなかった。

速まった心拍数が正常に戻るまで、

この照れが恋なのか、可愛い女の子からのアプローチに慌ててるだけなのか悩んでいた。


「おっ!この学校じゃない?校門が金色だし!」

「へ〜!校舎も金色だ〜!目立つね〜!」

「リムさんこそ目立つので、パンツ脱いでください。」

「「レディに向かってパンツ脱げなんて最低だよっ!!!鈴木!」」


フェイズと明に同時でツッコミを入れられる。

確かに卑猥にも聞こえるが、これは人のパンツを被っているリムさんに問題があるだろ…


「おっ!校内マラソンしてるよっ!」

「ふーん、人間界でも体を鍛える授業があるのね」


校門をくぐり、校舎までのびたレッドカーペットを歩いていると、校庭をマラソンしている女生徒達が目に入った。


「けっこう速いんですね〜。私ついていけるかな〜」

「大丈夫よリム!いざとなれば飛べばいいじゃない?」

「いや、飛んだらダメだろ。たぶん。」

「なんか近づいて来てないっ?」


確かに。女生徒達は校庭から校門に向かって走り始め…いや、俺たちに向かって来ているようだ。

嫌な予感がして、速水足で校舎に向かうが、玄関前で俺達は、女生徒達に取り囲まれた。


異性の集団に囲まれて、照れとも恥ずかしいとも言える感情が溢れる。

ふわっと風に乗って香る、気品のある花のような香り。

体育の授業中。しかもマラソンだぞ。

セレブは汗腺から香水でも流れ出てるのか?


「あの!鈴木殿でありましょうか!私は和子と申します。ぜひ、今度お茶会にいらしてくださいませんか?」

「私は…」

「ふ〜ん、こいつらが新入生〜?凄く弱そうだけど〜?」

「あの…私は…」

「君。私と賭け勝負して。。負けた方は勝った方の奴隷になること。」

「彼はランクEってとこね。よく入学できたね〜」


囲まれたと思えば、一声に声をかけられた。

お嬢様学校と聞いていたので、お淑やかな人が多いと思っていたが、話し方は威圧的だったり友好的だったり様々だった。


ランクE?弱そう?賭け勝負?

漫画とかでよくある、ランク付け制度があり、賭け勝負が許されているような学校なのだろうか…

表向きのお嬢様学校というイメージとは違い、

何か裏の顔がある学校なのかもしれない…


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