第47話 凡人の発想
「ちょっと待ってください!鈴木氏が一体何をしたって言うんですか!?」
「す、鈴木が!?」
「え?鈴木くん??え?」
〜〜〜回想〜〜〜
2通目の手紙が発行された時、俺は天使を買収しようと考えた。
「な、なんだなんだ!?坊主、オラになんのようだ?」
「まずは黙ってこれを受け取ってくれないか。」
俺は少し周りを警戒しながら、用意していた500円玉を上裸のオッサン天使に押し当てた。
「冷てっ!…こいつは人間界の金?じゃねーか?」
「そうさ。金があればなんでもできる、人間界の金さ。」
「なんで金をオラにくれるんだ?」
「ふっふっふっ、君に簡単な仕事を頼みたいんだよ。もちろん報酬は弾むぞ。」
この反応から察するに、これが金だと知っているが、価値まではわかっていないようだ。
2枚の500円玉を手のひらの上で転がしながら話を続ける。
「お、おい!大金積まれたって、オラはアマ様を裏切らねーぞ!」
「もちろん。手紙をゴールまで持って行け、なんて言わないさ。ただ、日本で楽しんでくるついでに手紙をポストに入れてきて欲しいだけさ。」
「日本で楽しむって何するんだ??」
天界の天使達は私利私欲の塊だ。
この質問に辿り着くことは読んでいた。
そこで俺はオッサンの本能をかりたてる呪文を放つ。
「キレーなオネーちゃん沢山パフパフ。1万円ぽっきり。天国プレイもあるよ。」
「ぱふぱふ…わかった。オラに手紙をよこせ。ただし、このことは誰にも言うな。」
「アンタは天使の鏡だ。この手紙を日本のどこにでもある赤いポストに入れてくれ。」
そう言って俺は、天使に500円玉2枚と金色の手紙を渡した。
どうやら天使はちゃんと依頼をこなし、郵便局員が金色の手紙を配達してくれたようだ。
天使に渡したのは500円玉3枚なので、彼が日本でパフパフすることはできなかっただろう。
金がなくて申し訳ない…
でも、少し変わったサングラスをしている天使が、俺に向かってピースサインしていた。
〜〜〜〜〜〜
事の顛末を皆に告げると
「ふふっ、郵便配達を頼るなんていかにも凡人の発想…でも、異能に勝ったのは凡人の発想だったようね。」
「フェイズ。郵便配達って何??…グスン」
「鈴木の配下のことよ。たぶん」
「いや、フェイズさん。配下というより公的なサービス業者かな…」
幸運と厄災の戦いの傍で、自分でも地味な戦い方だったと思う…
でも、俺ができる事はそんな地味な方法しかないと、人生経験から熟知している。
「あれ?結局この勝負どうなったのっ??」
「うわっ!?明!!どっから現れた!?」
「上だよっ!!」
「天界より上ってあんのか…?」
「ふふっ、勝負は鈴木の勝ち。よって、魔界は一先ず存続。そして、鈴木は独り身を継続。ということね。天神よ、今回は諦めなさい。」
「わ、わかってますよ!こ!ん!か!い!は!見逃してあげます!…フンッ!」
「エッグ…じゃあ、私達死なないってこと?」
「そうよリム!鈴木のお陰で魔界を守れたの!!」
「「ありがどう鈴木ぐーーーん!!」」
バチーーーーーン!!
強烈なラリアットのような二人のハグが俺を襲う。
本当に死という概念が天界になくてよかった…
とはいえ、俺の顔を覆う二人の悪魔的な両胸を感じ。郵便配達員に心からの感謝をした。
その後、リムさんとフェイズさんは、明に引っぺがされ。みんな帰路につく。
「明日学校で会いましょー!!きゃっはは!」
「鈴木くん…!今日はありがとう。また明日…///」
「鈴木!!明日は牛丼奢ってねっ!!」
「じゃーな!また明日ー!」
途中から皆んな散り散りになり、3日ぶりの家に各々帰る。
歩く度に、ここ最近の非日常を思い出し、疲労を実感していくのを感じる。
でも、歩く度、こんな凡人の俺を遥々天界まで助けに来てくれた人達に、感謝も込み上げてくる。
「明日あったら、また礼を言おう。」
そう呟いた俺は、まだ明日何が起こるか知らない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます